建ぺい率/容積率・40%/80%
その建物に、いかに個性を持たせることができるか。マンションの命題ともいえるこの問いかけに、前提条件となる要素がいくつかあるのだが、法令(または条例)上いかんともしがたいもの、設計ではどうにも解決できないものなどに「地形(じがた)」と「かかる制限」がある。制限とは建物のサイズ・用途を決めるものだ。都市計画上、すべての土地は「住宅」「商業」「工業」に大別され、さらにこまかく12の用途に細分化されている。なかでも良好な住環境を目的にもっとも厳しく制限された地域が「第一種低層住居専用地域」である。敷地面積に対する建築面積や延床面積の比率「建ぺい率」「容積率」、または建物の高さといった数値が小さく抑えられている。(詳細は「第一種低層住居専用地域は、なぜ人気が高い?」参照)
と、ここまではよくご存じの読者もいらっしゃるでしょう。特筆すべきは、「ザ・パークハウス上鷺宮」は建ぺい率・容積率が40・80%であることだ。第一種低層住居専用地域は、都心部では60・150%が割合として多い。本来、容積率の低い土地はマンション事業に適していないため、そもそも物件数が少ないのだが、さらにその半分近い制限の街並みに所在するというのは、珍しいという他ない。このスケール(敷地規模)だからこそ実現したのだろう。数値の低さは、緑地の豊かさやゆとりを感じる景観など第一種低層住居専用地域の魅力がさらに引き立つことを意味している。
恵まれた敷地条件
当該地は従前、損保企業の社宅であったという。敷地は、南間口が約170メートル、南北に約110メートルほどの、形状はほぼ正方形に近い地形(じがた)である。接道は南面を除く三方が公道と接する。すべて一方通行で歩道も(当該地側に)整備され、歩車双方の安心を思わせる。東の接道には桜並木。周囲の景観、住民の安全にも配慮した一画であることが手に取るようにわかる。もしこれらが以前の厚生施設を建設する際に盛り込まれたアイデアであるのなら、社会性のある企業だと評価されるべきだ。敷地面積は約1.9ヘクタール(18,843.96平米)。「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」(総戸数883戸)が同14,925.92平米。山手線内側の大型タワー「パークシティ大崎ザタワー」(同734戸)は6,445.59平米。湾岸超高層「スカイズ」(同1,110戸)21,242.52平米。いかに広大な敷地を有しているか、またその敷地規模が希少であるかがおわかりいただけると思う。
形状、大きさに加え、方角も理想的。これだけ恵まれた条件の土地は、そうお目にかかれるものではないだろう。 設計者も当該物件に携わる機会を得たことに、感慨深いものがあったのではないだろうか。では、さてその希少性の高い土地にどのようなプランを盛り込んだのか。次回は、その建物の特徴について言及してみたい。
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