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ダンサーズ・ヒストリー イデビアン・クルー 井手茂太(6ページ目)

ダンスカンパニー『イデビアン・クルー』の主宰であり、自身もダンサーとして活躍する井手茂太さん。カンパニーでの活動のほか、演劇やミュージックビデオ、CMなど、多彩なジャンルの作品を手掛ける超売れっ子振付家です。彼がダンスの道を志したきっかけとは……。ここでは、井手さんのダンサーズ・ヒストリーをご紹介します。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


20年に渡りコンテンポラリー・ダンス界を牽引

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『排気口』(C)青木司

作品は着実に支持を集め、イデビアン・クルーはダンス界で確固たる地位を築いてゆく。さらに井手さんの存在を全国区に広めたのが、ゼリア新薬『新ヘパリーゼドリンク』(2009~2011年)のCMだ。だてメガネに七三分けのヘアスタイル、スーツ姿でサラリーマンに扮した井手さんが、街中で突如として踊り出す。

「反響はすごかったです。変装してるつもりだったけど、動きでわかったっていう人は多かったですね(笑)」

当初は期間限定で流される予定だったが、好評につき延長が決定。
CMの影響力は絶大で、井手さんの両親も、“あれ、あんた?”と気付いたとか。
「親はずっと、舞台の裏方かマネージャーかなんかをしてると思ってた。
そこでようやく踊ってる人だったんだってわかったみたい(笑)」

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 井手孤独【idésolo】
(C)青木司

スーツ姿はもはや井手さんのトレードマーク。一見平凡なサラリーマン、しかしひとたび踊りだすと驚くほどのキレを持つ。軽快な動きと、その体型とのギャップもまた面白い。
「いわゆるダンサー体型じゃない、こういう演者がいてもいいんじゃないかと思ってるし、それで売ってるというのもちょっとある。といっても、痩せれはしないけど(笑)。お酒をよく飲むので、たぶんビール太り。稽古が終わってひと汗かいて、ビールを飲むのが最高の楽しみ(笑)」

イデビアンを結成して20年以上、イデビアン・クルーになり20年近く。当初のメンバーも、まだカンパニーに残っている。
「なんか続いてますけどね。続けることってすごく大変なんだけど、自分自身これしかやれることがなくなっちゃってるので、これしか取り柄がないんだろうなって思う。僕のファンタジーなんだけど、ものすごく素晴ら しいものを目標としてる訳ではなくて、ちょっと“クスッ”っていうのが共感できればなっていう気持ちがあって。だから“踊りの公演を観に行くぞ!”っ て意識で来られると、ごめんなさいって謝るしかないんですけど(笑)」

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イデビアン・クルー結成の頃

今や固定ファンも多く抱えるイデビアン・クルー。その間口は広く、いわゆるダンス・ファン以外のファンが目立つのも特徴だ。観客人口数千人といわれる東京のコンテンポラリー・ダンス界において、それは大きな強みと言えよう。チケット捌きに苦戦する巷のコンテンポラリー作品をよそに、イデビアン・クルーの公演は常に盛況が続く。「これまでの集大成的な作品」という前作『麻痺 引き出し 嫉妬』も、大好評の内に幕を閉じた。さらに4月にはナイロン100℃の新作が、5月には新国立劇場の演劇作品『テンペスト』がと、休む間もなく振付作の開幕が控えている。

多忙な創作活動の中で、井手さんがやり甲斐を感じる部分とは?
「メッセージ性は強くないけど、自分の表現したいと思ったものを初めてひとに見せた瞬間はすごくやり甲斐を感じます。でもやり甲斐より、ずっと不満の方が続いてる。自分はこういうことをやりたかった、表現したかったんだけど、いざやってみると“あ、これじゃなかったな”とか、次にやると“あ、これでもないな”とか、なんだかまだ目的地まで行ってないような気がするんです。どこかできっと、満足はしてないんでしょうね。だから続けてる、っていうのもあるのかなって思います」

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井手孤独【idésolo】(C)青木司




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