決算賞与が未払計上できる要件
決算賞与を検討してみよう
さて、従業員に対する賞与については、税務上、支給したときに費用として計上するのが原則です。もちろん、決算賞与についても、例外ではありません。しかし、資金繰りの都合で決算日までに支給できない場合には、一定要件のもと特例として未払計上することが認められています。
具体的に、次のすべての要件を満たしている場合には、従業員にその支給額を通知した日の属する事業年度において未払計上することが可能です。
1.その支給額を、各人別にかつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること
2.通知をした金額を通知したすべての使用人に対し、その通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
3.その支給額につき、通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること
3月決算の会社の場合、3月中に決算賞与を支給すればその支給した事業年度の費用となることは当然ですが、上記3つの要件をすべて満たしていれば、3月中に決算賞与を支給していなくても、税務上費用計上することができます。
なお、会社が従業員に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の立場で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の従業員と同様に賞与の支給対象としている者を除く)とその他の従業員を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。
未払計上するにあたっての注意点
決算賞与の未払計上が容認されるに当たっては、先ほどの3つの要件をすべて満たす必要がありますが、次のような場合には要件を満たさないことになりますので注意してください。1.通知日から支給日までに退職した従業員がいる場合で、会社が支給日に在職する従業員のみに賞与を支給することとしているときは、その未払賞与の全額について税務上は損金算入できない。
2.各従業員に通知した金額が支給額と異なっている者が1人でもいる場合には、その未払賞与の全額について税務上は損金算入できない。
これらの場合、未払計上した事業年度において損金算入することはできませんが、実際に支給した事業年度において損金算入することになります。
税務調査で否認されないための対策
決算賞与の未払計上について厳格な要件があるのは、会社内部で簡単に利益調整ができてしまうからです。そのため、税務調査において必ず損金算入の要件を確認されると考えてください。そこで、決算賞与を税務調査で否認されないためには、やはり決算期末までに各従業員に対して銀行振込で支給することをお勧めします。
しかし、資金繰りの都合でどうしても決算期末までに支給できない場合には、後日の税務調査を意識した証拠作りが重要となります。
決算期末までに「その支給額を、各人別にかつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること」を証明するためには、口頭で通知するのではなく書面で通知すべきです。通常の賞与支給時と同様に、決算賞与支給明細書を作成し従業員に渡します。保守的に考えて、できれば受け取った日付とサインをもらっておくといいでしょう。
そして、決算期末の翌日から1か月以内に銀行振込により各従業員に支給します。原則的に1日でも過ぎてしまうと、損金算入は認められませんのでご注意ください。