『いちや』東京・曳舟
2013年12月23日に東京・曳舟にオープンした「いちや」。大福とどら焼きをメインに据えた和菓子店です。滋味深い味わいと洗練された佇まいで既に多くのファンが付き、その人気ぶりたるや、連日早い時間に完売してしまうほど。『いちや』
「いちや」がオープンしたのは東京・曳舟の住宅地。客足が絶えることはなく、連日15時頃には完売してしまうほどの人気ぶりです。あまり知られていないようですが、曳舟駅には半蔵門線・田園都市線直通列車が乗り入れていて、都心へのアクセスは良好。駅周辺は再開発が進み、若い人も移り住んできているのだそうです。店があるのは、一見なぜこの場所を選んだのかと首をかしげたくなるような細い路地裏ですが、実は駅への行き来で人通りが多い道。よく考えられた立地です。
6種類の「大福」
長年他所で甘味処を営んできたオーナーの今井さん。和菓子をさらに追及したいという思いが形になった「いちや」の看板商品は「大福」です。朝・昼2回搗く餅は、滋賀県産のもち米「滋賀羽二重糯(しがはぶたえもち)」を使ったもの。キメが細かく伸びがよく、適度なコシも楽しめます。ふっくらと香りの良い粒餡は、北海道産の大粒小豆「豊祝(ほうしゅく)」で炊いた自家製。極めて雑味の少ない砂糖「鬼ザラ糖」を使うため、素材の風味が引き立つすっきりとした甘さです。「いちや」の大福は、粒餡を包んだベーシックな「いちやの大福」のほか「素焼大福」「豆大福」「黒ごま大福」「杏大福」の定番5種類に、季節の「果物の大福」1種類を加えた全6種類あります。定番5種類は全て粒餡を包み、季節の味は果物に合わせて餡が変わります。
こんがりと焼き色の付いた「素焼大福」は後を引く香ばしさ。
餅に淡い塩味の北海道産の赤えんどう豆を贅沢に混ぜた「豆大福」。赤えんどう豆の香りや食感が主張し過ぎないためでしょうか。たっぷり入りながらもバランスが良く感じられます。
口に含んだ瞬間に芳醇で深みのある香りが広がる「黒ごま大福」。特産として知名度を高めつつある長野県・駒ケ岳山麓産の黒ごまがたっぷり使われています。
粒餡と共にシロップで戻した干し杏を包んだ「杏大福」。フルーティーな香りと酸味が効いていて、さっぱりとした味わいが好みの人におすすめです。
ところで「朝作ったものをその日の夜までには食べてほしい」。そんな日持ちのしない和菓子は「朝生菓子」と呼ばれます。親しみやすい日常のお菓子が多く、夜には固くなってしまう「大福」は、その代表と言えます。