そんな中で多く声を頂くのが、「ジャズメンの名前や曲名を覚えられない」、「ジャズの話題で会話を始めても、話がまとまらない」といった悩みです。そこで今回は、ジャズ(JAZZ)会話をスマートに広げるための三つのコツをお伝えいたします。
1、名前は正確に覚えよう
「ほら、あれ素敵ですよね、ほらほらラッパのあの人がやってる、えーとなんとかっていうアルバム……」 パーティの席や友人との会話の中で、いざ最近聴いたJAZZについて話そうと思った時に、一番多いパターンです。これでは、折角のジャズの会話もお洒落なものにはなりません。ジャズの会話で一番大切なのが、ミュージシャンやアルバム、曲、楽器の名前を正確に覚えると言う事です。これをクリアしないと、話が出来ないばかりか、相手に背伸びしていると思われたままで終わってしまいます。逆に言えば、ここさえ押さえておけば、何とかなってしまうのも事実です。
でも、ジャズは元々はアメリカの音楽。横文字の名前を覚えるのは、大変と言えば大変です。しかも、100年以上の歴史がある音楽ですから、似ている名前の人も相当数いる事になります。
例えば、モダンジャズ期に西海岸で活躍したテナー奏者のジャック・モントローズ(Jack Montrose)とニューヨークなど東海岸で活躍したJRモンテローズ(J.R. Monterose)は違う人です。
スイング時代の大物ドラマー、ジョー・ジョーンズ(Joe Jones)とモダンジャズ期の大物ドラマー、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)も違う人。この場合は、名前が一緒なので、間違えられないように、ご本人がわざわざ「フィリー」(フィラデルフィア出身だから)とニックネームをつけているほどです。
アルトサックスに至っては、フィル・ウッズ(Phil Woods)とクリス・ウッズ(Chris Woods)とソニー・クリス(Sonny Criss)も同じアルト奏者。ソニー・スティット(Sonny Stitt)、ジミー・ウッズ(Jimmy Woods)、クリス・ハンター(Chris hunter)というアルトもいるから混同してしまいます。
そこで、まずはご自分のお気に入りのミュージシャンの名前を正確に覚える事から始めましょう。そして、もし同じ楽器で似ている名前の人がいたら、逆に良い機会ですので両方聴いてみましょう。
「フィル・ウッズとクリス・ウッズ、ソニー・クリスって何となく三人とも似てる」。そう感じたらしめたものです。良く聴くとそれぞれに音色が異なり、違いははっきりありますが、そこは三人ともにチャーリー・パーカー派でならしたアルトサックス奏者です。フレージングでは似ている所は多くあります。その事を会話で出せれば、一目おかれること請け合いです。
ソニー・クリス「サタデイ・モーニング」より「ティン・ティン・デオ」
サタデイ・モーニング
ラテンの妖しい雰囲気のテーマの段階から、ソニーの熱は伝わってきます。アドリブに入ると、アルトに乗り移ったかのようなその熱情が一気に放出されます。目まぐるしく音階が上昇下降を繰り返し、聴く者に興奮を与えます。いつもの性急なソニーのフレージングが、見事にハマった演奏と言えます。
続くピアノのバリー・ハリスによる渋いソロによって、一旦クールダウンしますが、またソニーによる熱いテーマで締めくくられます。燃えるように激しいラテンナンバーなのにどこか物悲しい、カーニバルの後のような印象の演奏です。
このCDは他にも、一曲目弾き語りの名手マット・デニスの名曲「エンジェル・アイズ」やひっそりとした風情が物悲しい終曲「アンティル・ザ・リアル・シング・カムズ・アロング」など聴きどころが多くあります。ソニー・クリスの代表作と言えるものです。
しかし、その割には、あまり市場には見かけない盤です。「ザナドゥ」(XANADU)というレーベルの権利問題が関係していると思われますが、このあたりのウンチクも話題に出せれば、ジャズ通に見られるポイントになりますね。
次のページでは、ジャズで意外に大事な「数字」についてです!
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