通貫孔の不足はどの段階で発覚し、なぜ適切な対応がなされなかったのか?
施工図チェックの段階でミスに気づけなかった場合、配管や配線をしようとしたときに、肝心の孔がなかったりずれていたりすることで、この段階になって100パーセント気づくことになります。では、発覚した段階でなぜ、適切な対応がなされなかったのでしょうか?
2013年8月の段階で、設備工事担当者から現場所長に「通貫孔にミスがある」と報告されていました。しかし、現場所長は「不具合の対処をするように」と指示しただけでした。
この失敗の直接的な責任者は設備工事担当者ですが、通貫孔施工図をチェックしなかった設備設計者や設計管理者(設計事務所)、現場所長(施工会社)にも相応の責任があります。
こうした工事関係者は入居者ではなくて分譲業者と契約しているためにその意向に左右されやすく、しかも大規模な工事で急がされてミスが起きやすいのです。しかも工事費を極力おさえて利益を出すために工事にたずさわる人数もできるだけ少なくするなかで、分かっていても後戻りできない、というのが背景にあるのではないでしょうか。
大手だから安心という保証はないのです
マンションの世界で評価が高いのは、大手では三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャル、野村不動産、住友不動産などです。また建設会社では鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店、設計会社では日建設計、日建設計ハウジング、三菱地所設計などです。大手だから安心という保証はどこにもないと、いうことを改めて気づかされる出来事といえます。とはいえ、さすが大手企業。契約者に対する対応は姉歯事件とは異なります。姉歯事件の際は、事業主が倒産してしまい、欠陥マンションを建て替える費用はすべて契約者の負担となってしまいました。
でも今回の事業主は大手不動産会社。契約を解除し、既に契約者が支払っている手付金に加えて、迷惑料として手付金の2倍を支払うと伝えられています。平均価格は1億4000万円なので、手付金が仮に物件価格の10パーセントとすると1400万円、迷惑料は2800万円になります。問題の建物については、解体するのか、補修工事をするのか検討中のようです。
こうした事件をきっかけに、大手離れは起きるのか?……次のページ