ストレス/その他のストレス

受験ストレスから抑うつに……「受験うつ」4つの回避法

【公認心理師が解説】受験生活で心身に強いストレスがかかると、「受験うつ」になるリスクが高まります。受験うつにつながりやすい6つの生活習慣と、ストレスの蓄積を回避する4つの生活改善のヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

受験生活のストレスから抑うつ症状が強くなる「受験うつ」

受験のストレス回避法

ストイックに自分を追い込んでいるうちに、「受験うつ」に近づくことがあります

志望校合格を目指し、寝る間も惜しんで勉強に励む受験生。夢に向かって努力するのは素晴らしいことですが、あまりに頑張りすぎて心や体の健康を損なわないよう、注意したいところです。受験生の心身の不調の一つが、いわゆる「受験うつ」。受験生活のストレスから抑うつ症状が強くなり、さまざまな心身症状が出現することがあります。

・気ばかり焦り、勉強が手につかない
・勉強を始めても、集中力が続かない
・簡単な問題なのにうまく解けなくなった
・自信が持てず、意欲が湧いてこない
・よく眠れない、眠っても疲れが取れない
・食欲が湧かない、あるいは食べ過ぎてしまう 

上記のような症状が2週間以上続いている場合は、注意が必要です。本格的なうつ病に移行している可能性も考えられます。いくつかの症状に心当たりがあれば、早めに思春期・青年期の精神疾患に詳しい精神科を受診しましょう。
 

睡眠不足や欠食なども……受験うつを招く6つの生活習慣

受験うつに陥りやすい人は、日常生活のバランスも乱れがちです。たとえば、次の6つの生活習慣に心当たりがある場合は要注意です。

1. 睡眠時間を削り、夜型生活や昼夜逆転になっている
受験前の追い込み時期になると、夜更かしが続いたり、明け方まで勉強して昼夜逆転してしまったりすることもあるかもしれません。こうして睡眠不足になったり、睡眠のリズムが乱れたりすると、抑うつ、不安、苛立ちなどの精神症状が引き起こされたり、頭痛や肩こり、めまいなどの身体症状が生じたりすることがあります。

2. 太陽光を浴びる機会が少ない
毎日家にこもって勉強し、ほとんど外に出ていない……。太陽光を浴びる機会が少なくなると、精神の安定に関わる脳内神経伝達物質セロトニンの分泌が低下し、抑うつの状態に近づきやすくなってしまいます。明るい室内でも、家庭のルームライト程度の明かりではセロトニンの分泌には不十分です。

3. 欠食や偏食が続いている
夜遅くまで勉強をして睡眠不足になると、起床後に食欲が湧かず、朝食を欠食しがちになります。さらに、昼にはうどんやラーメン、夕食は塾や予備校前にファーストフードのハンバーガーやコンビニおにぎり。夜中に小腹がすいてカップラーメンで夜食……こうしたメニューでは、セロトニンの合成に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルが十分に補給できません。すると、お腹は満足できても、精神は安定しにくくなります。

4. 運動する機会はほとんどない
長時間同じ姿勢で座りっぱなしになり、適度に体を動かす機会がないと、体幹が鍛えられず姿勢が悪くなっていきます。すると、慢性的な首こり、肩こり、腰痛に悩まされやすくなります。また、たまったストレスも発散されにくくなってしまいます。

5. 気晴らしで疲労が回復できていない
気晴らしの方法として、ゲームや動画、SNS を挙げる受験生は多いですが、これらに夢中になっているときには、勉強と同じ姿勢が続くために肩や首のこりが取れず、眼精疲労も続いてしまいます。

6. 気軽なおしゃべりを楽しめていない
誰かと冗談で笑い合ったり、ゆっくり話したりする時間が持てなくなると、気持ちが晴れず、毎日がとても息苦しくなってしまいます。

このような生活習慣が続くと、受験うつに追い込まれるリスクが高くなります。では、どのようにそのリスクを回避していけばいいのでしょう? 次の4つの生活改善を提案します。
 

受験のストレス回避法 1:睡眠時間を確保し、早寝早起きをする

たっぷり眠って早寝早起きが、受験勉強には必要

朝型の健康的な生活リズムをつくることが、受験生には必要です

受験うつを回避するには、十分な睡眠時間の確保、早寝早起き、太陽を浴びる生活が欠かせません。必要な睡眠時間には個人差もありますが、小学校高学年ならおおよそ9時間、中学生なら8時間、高校生では7時間くらいは必要だと言われます。

ただし、その睡眠を「早寝早起き」によってとることが肝心。夜更かし生活が続くと睡眠の質が悪くなり、睡眠の疲労回復効果も弱くなってしまいます。10時、11時といった早い時間に就寝すれば、朝は夜明けとともに自然に目が覚めます。すると、朝から頭が働きやすくなります。
 

受験のストレス回避法 2:太陽をしっかり浴び、リズム運動を行う

太陽の光を浴びることが大切

受験によるストレスを解消するためには、太陽の光を浴びることが大切です

精神の安定をもたらす脳内神経伝達物質セロトニンの分泌は、太陽光を浴びることで高まります。短時間でも外に出て、太陽光の刺激を受けることが大切です。

セロトニンの活性に必要な照度は2,500ルクス以上とされていますが、室内の蛍光灯程度の照度では、せいぜい500ルクス程度だと言われています。曇りでも日陰でも、日中の屋外には2,500ルクス以上の照度は十分にあるので、外に出て太陽光をしっかり浴びることが効果的。

屋外で太陽光を浴びる時間は、30分程度で十分です。外出をしない日でも、カーテンをしっかり開けて、部屋の中に太陽の光を取り込むようにしましょう。またセロトニン分泌には、歩いたり自転車をこいだり、といったリズム運動が効果的だとされています。気分転換も兼ねて1日に一度は屋外に出て、体を動かすことが大切です。
 

受験のストレス回避法 3:1日3食、バランスのよい食生活を心がける

1日3食、バランスのよい食事を心がけよう

栄養バランスのよい食事が、受験うつを乗り越える安定した精神状態を保つ秘訣です

日頃、コンビニおにぎりやファーストフード、麺類などで手軽に食事を済ませている受験生は多いかもしれません。たしかにお腹は満たされますが、多様な栄養素をバランスよくとらないと、心身の状態が悪くなってしまいます。

特に、セロトニンのもととなる必須アミノ酸「トリプトファン」の摂取は非常に大切。トリプトファンは、牛乳、卵、肉などのたんぱく質の多い食材に豊富に含まれます。こうした食材を普段の食事の中でしっかりとり、さらにセロトニンの合成に必要になるビタミンB群、ミネラルが豊富に含まれる食品も、バランスよく食べるようにしましょう。

つまり、1日3食、主食、副菜をバランスのよく取り入れた健康的な食生活を続けていくことが、安定した精神状態を保つためには必要です。
 

受験のストレス回避法 4:ときには勉強を忘れて思い切りおしゃべり

ときには勉強を忘れて雑談を

勉強で忙しくても、ときには気の置けない仲間と思い切りおしゃべりをする時間も必要です

受験勉強に挑んでいると、無駄なおしゃべりで時間を潰すのがもったいなく思えてしまうこともあるかもしれません。しかし、何気ない雑談をきっかけにしてお互いの思いを語り合っていくと、抑えていた気持ちが解放され、ふっと気持ちが浄化されます。

身近にいる人と、どんなことでもいいのでおしゃべりをしてみましょう。無駄に思える時間が、心のバランスに大切な作用をもたらすことがあります。愚痴や弱音と思えるようなことでも、誰かに受け止めてもらえるだけで楽になり、それによって「気持ちを切り替えて頑張ろう」という気持ちが湧いてくることが多いものです。

――受験生活の中で、憂うつや不調を感じ始めたときには、以上の4つのポイントをぜひ意識してみてください。ただし、冒頭に記したような症状が続く場合には、早めに医師の診察を受けることが大切です。

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