ストレス/家庭・育児・嫁姑・義理づきあいのストレス

「キャリア娘」と「支える母」の微妙な母娘関係とは

キャリアウーマンの娘を持つ母は、嫁がせた後も、娘のサポートに大忙し。家事・育児は全面的にバアバに任せ、さっそうと仕事に邁進する娘の姿を見ながら、一抹の不安と不満を抱える母も多いもの。セカンドライフを構築する初老の時期に、孫育てに追われる老母のメンタルリスクについて考えてみましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

母娘関係では、「母側の憂うつ」も深刻!

ここ数年「母と娘」が抱える微妙な関係について、注目が集まっています。母親に依存される「娘側の憂うつ」を伝えるものが多いのですが、実際には、成人してからも娘から頼られる「母側の憂うつ」も深刻なものです。

その代表的なものに、「キャリア娘」と「支える母」の微妙な母娘関係があります。私が見聞きしてきた、事例の一部をお伝えしましょう(プライバシー保護のため、細部を変えています)。
 

事例1: 「私は娘の召使い!?」――家事・育児はバアバの仕事

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思う存分キャリアを追究する娘。一方で、老母は娘家庭のおさんどんに追われる

小さい頃から優等生だったA子さん(40歳)は、母であるF美さん(65歳)の自慢の娘。A子さんは大学卒業後、新聞社に就職。結婚して子どもを出産してからは、フリージャーナリストとして夜も昼もなく、全国を走り回って働いています。

そんなキャリア娘を支えるのが、老母のF美さん。娘の家庭を切り盛りするため、毎日、娘の家に通って家事全般を引き受け、孫の保育園のお迎えや保護者会行事にも出席してきました。

初老の友人たちが、やれ「旅行だ」「登山だ」と楽しんでいるのを尻目に、F美さんは相変わらず娘を支え、家事・育児に追われる毎日。孫が年長になり、「小学校に入ればやっと自分の時間が持てる」と期待していた矢先に、娘のA子さんが第2子を妊娠。「2人目の世話もお願い!」と娘から頼まれると、何も言えません。

2人目の子が生まれて小学校に上がるまでは、最低でもこの先8年間は、娘の家に通い続けなければなりません。そのときF美さんは、73歳になります。「何の躊躇もなく仕事に邁進する娘を見ると、時々やりきれなくなることもあるんですよね……」とため息をもらすF美さんです。
 

事例2:「孫育て」から解放されて、心に急に穴が空く

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70代になって「怒涛の孫育て」から急に解放され、何をしたらいいのか戸惑う老母

都内に暮らすJ子さん(70歳)は、大学病院の正看護師として夜勤もこなす娘のY香(46歳)さんを支える母。忙しい娘に代わって、娘の家庭の家事はもちろん、2人の孫の世話も近所に住むJ子さんが全面的に担当してきました。そんな孫たちも、上が中1、下が小5に成長。最近では、兄弟だけで夜の留守番もでき、母のY香さんがいないときには、冷凍食品を温めるなどして、夕食も食べられるようになりました。

孫育てから解放されてほっとしたのもつかの間、急に空虚な気持ちに襲われるようになったJ子さん。何しろ初孫が生まれて以来、13年間という長きに渡って娘の家庭に通ってきたのです。急にその任務から解放されても、何をしたらいいのか分かりません。気がつけば、ご近所や昔の友人との縁も遠のき、今さら関係を掘り起こすのも一苦労です。

かといって、用もないのに孫の顔を見に行っても、塾や部活で忙しく、なかなか会うこともできません。娘は子どもたちの学費を稼ぎ、「看護師長」という夢を目指して、より一層仕事に邁進しており、老母につきあう暇もありません。急に自分の役割が分からなくなり、途方に暮れてしまうJ子さんなのでした。
 
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