日本酒/酒造、酒蔵訪問

400年以上の歴史、江戸の地酒「金婚正宗」「屋守」(2ページ目)

日本を訪れた外国人観光客が1000万人を超えた。和食はユネスコ無形文化遺産になった。日本文化の象徴的飲み物である日本酒もまるでそれに連動するようにじわじわと人気を取り戻している。そして2020年には東京にオリンピック開催。東京の地酒を見直す絶好のタイミングだ。創業から427年! 東京神田生まれの豊島屋を訪ねた。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド


地震でもびくともしない100年物の土蔵

事務所

蔵は東村山の住宅街にある。ここでも購入は可能。

豊島屋本店は、関東大震災、東京大空襲を経て、現在は千代田区猿楽町に所在する。また12代目の時代、下り酒の購入のみならず自社にて清酒製造を始め、昭和初期には清酒、白酒、みりんを醸造する豊島屋酒造(株)を分離独立させており、現在酒造蔵は東京都東村山市にある。今回はこの蔵にお邪魔した。

お迎えいただいたのは「遠路はるばるようこそいらっしゃいました」と穏やかな笑顔が印象的な(株)豊島屋本店16代目吉村俊之代表取締役。蔵内の案内は、豊島屋酒造(株)の4代目田中孝治部長と営業の高橋さんだ。

煙突

日本酒蔵のアイコンともなる煙突と水のタンク。

まずは、この地域のランドマークと言える煙突と「金婚」の文字がまぶしい浄水タンクを見上げ、「敷地内地下150メートルからくみ上げる水は、秩父古生層からの水でやや硬水」と説明してくださる。そう、関東の水は意外にも硬水なのだ。しかし、飲んでみるととてもなめらかで優しい味わい。
「水は年間を通して15℃~16℃です。酒造りを行う冬場は温かく、夏場は冷たく感じます」と。しかし米は手洗い。冬場は大変な作業だろう。

 
和釜

火入れ作業に使用する和釜。中には蛇管が見える

洗米後は米を蒸す。今は機械で蒸しているが細かい温度管理や調整はやはり人の手で行うとか。蒸米機の脇には昔ながらの和釜があるがこれは現在蒸しには使用せず、お湯をはって火入れの作業に利用している。

その後、生まれ始めたばかりの麹が息づく静かな麹室や、新鮮なバナナの香りを放つ酒母を育てる?場、華やかな香りが立ち込める大吟醸タンクやまだ米の原型が見える大きな醪タンクなどを次々拝見。

 

貯蔵タンク

大きなタンクが並ぶ蔵内、天井には頑丈そうな梁が

ふと見上げると頑丈そうで複雑な組み方をしている高い天井と梁が見える。
「土蔵は少なくとも100年はたっています。天井が高いのは冬場暖かい空気が層になって溜まるような仕組みになっているんです」
とのこと。あちこちに修繕のあとがあり、長い間大切に使われていることがよくわかる。通常の酒蔵で見ることができないのは「白酒」だろう。豊島屋は、日本で二つある白酒メーカーの一つで元祖でもある。

 

白酒

白い小振りのタンクの中に白酒が

ちなみに白酒とはどんなものかをここで説明しておこう。原料はもち米。蒸したもち米にみりんを加え落ち着かせた後、ゆっくり時間をかけ丁寧に臼で引く。もち米を発酵させるわけではないのでリキュールになる。濃いにごり酒でも甘酒とも違うもの。もとは博多で造られていた「練り酒」が原型とも言われているが、いやいや、豊島屋の白酒はお雛様が教えてくれたものであるから霊験あらたかなのだ。そのうえ、豊島屋はみりんの醸造を行っている。みりんがよくなければ美味しい白酒はできない。

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