労務管理/就業規則の基礎知識

正しい労働条件の明示方法を確認しておこう!(2ページ目)

労務管理のスタートは、採用時の労働条件の明示から始まります。法的には、使用者には労働条件の明示が義務づけされ(労働基準法第15条第1項)、労働契約内容についてできる限り書面により確認するもの(労働契約法第4条第2項)とされています。最初が肝心要。労働条件の明示方法と明示内容をしっかり押さえておきましょう。抜け落ちていたり誤解していた項目があった場合は即対応することです。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


即時解除権などに注意!

明示された労働条件が事実と相違する場合、従業員は、即時に労働契約を解除することができます(労働基準法第15条第2項)。

また、就業のために住居を変更した従業員が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合には、企業は必要な旅費を負担しなければならないことになっています(労働基準法第15条第3項)。


労働条件明示に関わる書式を整備しよう!

これらの書式集を活用し自社版を作成しておきましょう

これらの書式集を活用し自社版を作成しておきましょう

では前述した内容を書式として整備しましょう。労働条件の明示は、労働条件通知書で行います。これは企業側からの一方的な通知ですが、実務上は労働契約書として企業側・従業員双方で内容を確認し合意した契約書の書式とすることもできます。より明確な合意書面になりますから、ぜひ契約書形式にすることをお勧めします。

1.労働条件通知書
平成25年4月1日に改正された労働基準法施行規則第5条対応版です。前ページで解説した労働契約締結時の「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準」を追加した書式となっています。

2.労働契約書
これは上記1.の通知書ではなく契約書にした書式です(以下、同様です)。従業員採用時の基本となる労働契約書式です。

3.パートタイマー労働契約書
パートタイマーは個別に労働条件が設定されることが多いですね。就業規則で画一的に記載することは困難です。そのためパートタイマー用に別就業規則を作成することもあります。正規従業員との条件の差異で無用な雇用トラブルが発生しないように本書式で労働条件を明示しておきましょう。

4.嘱託従業員労働契約書
嘱託従業員は、定年後の従業員(1年ごとの契約)など個別契約で雇用される60歳以降の者を呼ぶことが一般的です。更新の条件などを確認してみてください。

5.秘密保持に関する誓約書
法的な明示事項ではありませんが、労働契約の締結時には、こうした誓約書を受領しておきたいものです。個人情報など、情報管理の重要性が増しています(個人情報保護法)。企業の機密情報管理ルールとその漏洩時の損害賠償の可能性について認識させ、従業員本人の個人情報管理に関する同意を得る書式です。リスク管理上欠かせない書面といえるでしょう。

6.身元保証書
皆さんの企業では身元保証書を受領していますか。従業員が企業に何らかの損害を与えた際、身元保証人が連帯して損害額を賠償することを記載した内容の書面です。


その他、 新入社員諸事項届出書などを活用しよう!

7.新入社員諸事項届出書
労働条件を明示して一安心してはいられません。すぐ給与計算・社会保険実務等が発生しますね。多くの個人情報が必要になります。漏れることがないようにチェックリストとして諸事項届出書を活用することをお勧めします。 特に新任担当者は覚えることが多いので、こうしたフォーマットを作成しておくと情報漏れを防ぐことができます。自社版を作成しておきましょう。

<参考記事>
初めてでもわかる就業規則の基本
初心者でも大丈夫!就業規則の作成

<参考資料>
WORDでそのまま使る人事労務管理基本書式集(採用編)

労働条件は書面を交付し明示しましょう!(東京労働局)



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