色鮮やかで、みんなで囲んで取り分けて食べるクリスマス料理の数々
家族や親戚が一堂に会して祝うクリスマス本番に向けて、何日か前から少しずつクリスマス料理の下ごしらえにとりかかる
フィンランドには、もちろん伝統的なクリスマス料理が何種類もありますが、実はその多くは普段からフィンランドの食卓で、素朴な定番メニューあるいはちょとしたごちそうとして、よく見かけるものばかり。クリスマスはもちろん特別な日だけれど、大切なのはレシピの特別さではなく、あらゆるごちそうが食卓いっぱいに並んで、それを少しずつみんなと分け合って食べるという幸せなのですね。そしてクリスマスが終わった後も何日かは、ちょうど日本のおせち料理のように、つい作りすぎた惣菜を「そろそろ他のものが食べたいね」なんて笑いあいながら食べ続けます。
さまざまな種類の料理を自分のプレートに取りわけて食べる
これら伝統料理の数々は本来、クリスマス当日に家族や親戚で集まって家でいただく家庭料理ばかりなので、残念ながら旅行客が外食先でも確実に出会えるとは限りません。けれどお店によっては、これから紹介していくようなクリスマスの定番メニューを、期間限定メニューやビュッフェなどに取り入れていることもあるので、「Joulu(クリスマス)」の言葉が添えられたメニューを見かけたらぜひ試してみてください。また、スーパーマーケットや惣菜屋に行くと、出来合いのクリスマスメニューが見つかるかもしれません。
それでは、いくつか代表的なクリスマスメニューをご紹介しましょう!
フィンランド流クリスマスのメインといえば…チキンではなくハム!
クリスマスの一ヶ月ほど前からスーパーで売られ始める、巨大なクリスマスハムの固まり
世界的には、クリスマスのメイン料理=ローストチキンというイメージが定着していますが、実はフィンランド始め北欧諸国のクリスマスの食卓のメインをはるのは、鶏ではなく豚。クリスマスと同時期にやって来る冬至を祝う古くからの祭りで、神々に豚やイノシシを捧げる風習があったことが由来となっています。
何時間もオーブンでじっくり焼き上げたジューシーなローストハムをどんと食卓の中心に置いて、みんなで少しずつ切り分けていただきます。ソースの定番は自家製マスタードソース。12月のスーパーマーケットで遭遇する、目を見張る大きさのハムの固まりがごろごろ売られている光景は圧巻です。
色鮮やかで味もさまざまなオーブン料理、キャセロール
人参やビーツを使うとクリスマスカラーのキャセロールに仕上がる
ハムと並んでクリスマスの食卓を彩るのが、ラーティッコ(laatikko)と呼ばれるキャセロールです。作り方はシンプルで、好みの野菜や肉、お米、マカロニなどを細かく刻んで生クリームやチーズと混ぜあわせて味を整え、耐熱皿に入れてオーブンでじっくり焼き上げるだけ。野菜はおもに根野菜が使われて、特に人参やビートルートなどの発色が良い野菜を入れると、クリスマスカラーの色鮮やかなキャセロールに仕上がります。
このキャセロールとともに、ロソッリ(rosolli)と呼ばれる、やはり根野菜を細かく刻んで作るサラダも定番料理として横に並びます。
やさしい味のミルク粥は、クリスマス休暇中の軽食やデザートに
ミルク粥は普段は朝食の定番メニューなので、ホテルの朝食にも必ず用意されている。クリスマスにはちょっぴり気取って、ドライフルーツシロップをかけていただくことも
クリスマスディナーではなく、クリスマス休暇中のちょっとした軽食やデザートとしてよく食べるのが、普段は朝食メニューの定番でもあるリーシプーロ(riisipuuro)と呼ばれるミルク粥。その名の通り、お米を牛乳でとろとろに炊いて作る、胃に優しいお粥さんです。例えば朝食時には、バターを少し落としてコクを出し、砂糖やシナモンパウダーをかけて食べたり、ベリーと一緒に食べたりします。でもクリスマスに食べるときは、ドライフルーツで作った甘いシロップをかけて、デザートとして食べる家庭が多いようです。
さらに、ミルク粥を炊くときにはお母さんが鍋にこっそりアーモンドを仕込んでおいて、みんなで食べているときにアーモンドが出てきた人がラッキーパーソン!なんていう楽しいサプライズもよくやります。ミルク粥は年間を通して、ホテルの朝食ビュッフェなどに必ず用意されています。お米を牛乳で炊いて、しかも甘くして食べるなんて……と、日本人としてはいささか抵抗があるかもしれませんが、実際はフワフワでとても優しい味なので、ぜひチャレンジしてみてください。
以上、フィンランドのクリスマス料理が、いかに素朴で、でもみんなで囲んで食べるからこそ楽しくて美味しいか、がおわかりいただけたでしょうか。クリスマスシーズンの旅行中は、ぜひこういったクリスマスならではのメニューも積極的に試してみてくださいね。