鑑賞ポイント3:情感を感じてみよう
3つめのポイントとして、悲しい・可笑しい・温かいというような情感に注目して、アートな絵本を読んでみることをおすすめします。芸術を鑑賞する場合、作品を鑑賞する際の知的理解などは専門家には到底かないません。けれども、情感という点では、専門家が感じられないことを素人が感じとるということがよくあると聞きます。絵本も例外ではありません。大人が気づかない主人公の感情を、小さな読者がしっかりと感じとって共感するということも珍しくないのです。「この作品は、子どもには難しい」などと、大人が一方的に決めつけないで、子どもたちの素直な心に作品を委ねてみましょう。言葉では説明できなくても、作品の持つ情感を感じとることもあるはずです。
■きりのなかのサーカス
情感たっぷりの絵本として、 『きりのなかのサーカス』をご紹介しましょう。霧に見立てたトレーシングペーパー、突然現れる鮮やかなサーカスの人々…… そんな一風変わった演出の虜になって、ふと気がつけば、読む人の心象風景が浮かんでは消えていく。ため息が出るほど幻想的な作品です。大人向けの作品ですが、気に入って何度も読み聞かせをせがむお子さんもたくさんいます。 詳細はこちら→ようこそ! 幻想的な『きりのなかのサーカス』へ
■クレーの絵本
もう1冊ご紹介するとしたら、谷川俊太郎の『クレーの絵本』を外すことはできません。この絵本でとり上げられているスイスの画家パウル・クレーの作品には、題名と絵との間に相互依存関係があるそうです。題名だけでも 絵だけでもわかりにくくて、その両方が作品として必要なのだと言われています。それは、まるで絵と文章が互いに補完しあう絵本のようですね。
『クレーの絵本』は、そんなパウル・クレーの絵に詩人・谷川俊太郎が詩を添える詩画集に近い絵本です。絵と題名と詩が互いに呼応して、読者の心を揺さぶります。大人と一緒に読むなら、小学生のお子さんでも充分楽しめるでしょう。
詳細はこちら→絵と言葉が響きあう『クレーの絵本』