日本学生支援機構「第一種奨学金」と「第二種奨学金」
最も多くの学生が利用している日本学生支援機構の奨学金の内容について解説します。そもそも奨学金とは、経済的な問題で進学を諦めることがないように設けられたものなので、その採用にあたっては「家庭の収入」と「お子さんの成績」をもとに審査されることになります。それぞれがどのような内容となっているのか? 具体的に解説していきましょう。<目次>
日本学生支援機構(JASSO)とは
「国の奨学金とその他、民間の奨学金の概要」でも解説していますが、日本学生支援機構(JASSO)は2004年に設立された独立行政法人です。それまで国の奨学金事業を運営してきた日本育英会が廃止されるとともに、奨学金事業を引き継ぎました。つまり、日本学生支援機構の奨学金は公的な国の制度であり、無利子または有利子での貸与型の奨学金となります。
日本学生支援機構では、
- 無利子の奨学金を「第一種奨学金」
- 有利子の奨学金を「第二種奨学金」
無利子「第一種奨学金」の貸与金額
第一種奨学金は、進学先が大学か短大か/専門学校なのか、親元から通うのか/ひとり暮らしをするのか……など学校の種類や通学環境によって月々の上限支給金額が決まっています。また、2018年度の入学者から、「最高月額」と「その他の月額」とに分けられました。その採用基準の違いは家庭の収入にありますが、詳しくはこの後解説します。
第一種奨学金の成績基準
高校で申込む予約採用の場合、進路の種別に関わらず5段階評価で3.5以上となっています。つまり、3.5未満の人は第一種奨学金を利用できない、ということです。ただし、住民税非課税など特に経済的に厳しい家庭の生徒については成績基準が問われず、優先的に採用される形となっています。在学採用の場合、大学・短大の成績基準は予約採用と同じですが、専門学校については3.2以上と0.3ポイントハードルが低くなっています。住民税非課税世帯への対応は在学採用でも同じです。
第一種奨学金の収入基準
表を見て頂ければわかりますが、「最高月額」と「その他の月額」の家庭の収入基準が異なります。2018年度の入学者から、第一種奨学金の収入基準のハードルが実質上げられました。「第一種と第二種の併用」者しか第一種奨学金の「最高月額」が利用できないことになります。成績と収入基準を満たしていても採用される保証のない選抜型であった第一種奨学金が、現在では基準を満たせば原則全員採用という方針に変わっています。しかしながら、貸与月額の選択肢が狭くなってしまいました。
有利子「第二種奨学金」の条件や貸与金額
日本学生支援機構の有利子の奨学金は「第二種奨学金」と呼ばれます。第二種奨学金の上限利息は3%と制限されていますが、実際の返済利率はその時々の経済情勢によって決定される仕組みとなっています。 第二種奨学金は、第一種奨学金とは大きく異なり、学校の種類や通学環境などに関係なく、2万円~12万円の中から希望する月額を自由に選択することができます。さらに、私立大学の薬学部や獣医学部へ進学する人には更に2万円、医学部や歯学部に進学する人には更に4万円と、最高月額の12万円から増額して借りることができます。
月々の貸与額もそうですが、有利子の第二種奨学金では、成績基準も第一種奨学金とは大きく異なります。第二種奨学金の成績基準として、以下の3つのいずれかに該当する人となっています。
- 出身学校又は在籍する学校における成績が平均水準以上と認められること
- 特定の分野で特に優れた資質能力を有すると認められること
- 学修に意欲があり学業を確実に修了できる見込みがあると認められること
ポイントは3番です。
先に述べましたが、第二種奨学金の成績基準は3つのうちのどれかひとつに該当すれば基準を満たしていることになります。
大学に進学して頑張ろうと思うからこそ、奨学金を借りるわけなので、進学を志す全ての受験生は(3)番の条件を満たしていると考えていいでしょう。
また、第二種奨学金の収入基準のハードルは低く、4人世帯(予約採用・2019年度入学者の例)でみると「世帯年収1,100万円以下」となっています。第二種奨学金は、奨学金が必要な家庭にとっては最もハードルの低い奨学金といえます。
2020年度から給付型奨学金が拡充される
2017年度から住民税非課税世帯に対する給付型奨学金が始まっていますが、2020年度にはさらにその内容が拡充されます。政府の方針で、特に経済的に厳しい家庭に対しての支援が手厚くなっていきますが、それ以外の家庭では返済が必要な貸与型奨学金を頼らざるを得ません。今後は、低所得層だけでなく中間層への支援が課題になると思われますが、現行の奨学金制度を利用する以上は、その内容とポイントを正しく理解することが大切です。
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