相手への気遣いが「ダブルバインド」を生むことも
「お土産いらないわよ」という建前の裏にある本音とは?
ダブルバインドとは、「二重拘束」のこと。2つの矛盾したメッセージに縛られて、判断に迷い、身動きがとれなくなってしまう状態です。ダブルバインド的な会話は、たとえばこんな身近な会話の中でも、しばしば見られるものです。
例1: 「お土産は持ってこないでね」と姑に言われたので、手ぶらで出かけたら、ムッとされた。
例2: 「仕事が終わったら早く帰れよ」と上司が言っているので、帰る準備を始めるとイライラした様子に見える。
例3: 「近くに来たら遊びに来てね」と親戚の人に言われたので、出かけていったら嫌な顔をされた。
うまく立ち回れば、心の距離が近づくことも
「本音」をつかんでさりげなく配慮すると、喜ばれることも
たとえば、例1のように「お土産はいらない」と「建前」を言うお姑さんの「本音」を見極め、「通りでおいしそうな物を見つけたので、つい買ってしまいました。ご迷惑でなければ……」なんてかわいい言い訳をして、そっとお土産を手渡す。姑は、「もう、気を使わないでって言ってるのにぃ」とかつぶやきながら、内心喜んで受け取ってくれるかもしれません。こんな風に、ゲーム的な会話のやりとりを交わし合うのも、コミュニケーションの楽しみ方の一つと言えます。
しかし、こうした気配りをそつなくできるのは、「慣れ」のたまものです。若いうちは、そう器用には立ち回れないものです。「お土産はいらない」という言葉を鵜呑みにし、いつも手ぶらで出かけて「無粋な嫁だ」と嫌われてしまい、嫁と姑の関係が悪くなってしまうこともあるでしょう。
例2のように、上司に「早く帰れよ」と言われたのでその通りにし、「新人のくせに生意気だ」と反感を持たれたり、例3のように、親戚の人の「遊びに来て」という社交辞令に気づかず、そのお宅に立ち寄ったら「常識がないわね」とあきれられたりする……こんな失敗も多いと思います。
とはいえ、こうしたやりとりをいくつも重ねていくうちに、場の空気を読んだり、相手の気持ちを探ったり、常識のパターンを身につけることができ、しだいに「相手の本音」が分かってくるものです。「裏表なく、はっきり『こうしてほしい』といってくれれば」と言いたくなる気持ちもわかりますが、本音をオブラートに包んで話すのは、必ずしも陰湿なケースばかりでもなく、気遣いの一環であったり、「本音に気づいてほしい」という期待である場合もあります。そんな相手の気持ちに配慮して、受け手が上手く立ち回ることができれば、人間関係がぐっと円滑に運ぶことも少なくありません。