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「行事育」具体例1:お雑煮

親子の根っこをはぐくむ 和文化研究家・三浦康子の「行事育」メソッド。おなじみのお雑煮を、「行事育」の具体例としてとりあげます。お雑煮というのは、日本文化、家庭文化の本質をつく正月行事の要。将来、親のありがたみをしみじみ感じる日がくるでしょう。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

おなじみのお雑煮を「行事育」の具体例1として取り上げます。
 

お雑煮の本質

お雑煮というのは、日本文化、家庭文化の本質をつく正月行事の要

お雑煮というのは、日本文化、家庭文化の本質をつく料理です


 
お雑煮を食べないと正月が来た気がしない、という方は多いもの。じつは、その感覚が日本文化、家庭文化の本質をついています。

一連の正月行事には、新年を司る年神様を家に迎え・もてなし・見送るという意味があります。年神様は新年の神様であり、農耕神、祖霊神でもあると考えられているので、家々にやってきて、新年の魂と幸福を授けてくださるといわれています。魂というと驚きますが、生きる力を毎年更新していくと考えました。昔は「数え年」だったのは、頂戴した魂を数えれば年齢になると考え、お母さんのお腹の中にいる時にはすでに魂があるため生まれた時が1歳で、それ以降は元旦になると一斉に年をとると考えたからです。年神様は鏡餅に依りつくので、年神様の御魂が宿った餅玉を分け与えたのが「お年玉」(御年魂)のルーツ。そのお餅を食べるための料理がお雑煮なので、文化の要といえます。

そもそも、稲作文化でお米を主食とする日本人にとって、餅というのは稲穂の魂が込められた大事な食べ物です。それを神様にお供えし、一緒にいただく「神人共食」がお雑煮の原点で、その土地の特産物や食文化が取り入れられ、さらに家の文化が加味された雑煮となって、受け継がれてきました。

 

お雑煮で大切にしたいポイント

家庭のお雑煮事情は、大きく分けて3つのパターンがあります。
・お雑煮を作らない(食べない)
・家庭の味とは無関係のレシピで作る
・家庭の味(夫の実家の味、妻の実家の味、両家の融合)で作る

お雑煮を作らない家庭で育つと、正月文化を体験していないので、文化を共有したり伝承したりすることができない人に育ってしまいがちです。一方、お雑煮を作る場合でも、家庭の味とは無関係の雑煮で育つと、それがその人の正月文化になり、家庭の味を受け継いだ雑煮で育つと、正月文化の本質を体現できる人になります。

また、お雑煮には地域性があり、同じ地域でも各家庭で微妙に違います。たとえば、「うちの雑煮は、おじいちゃんの出身地の○○と、おばあちゃんの出身地の○○が合わさっているのよ」と話せたら、雑煮を通じて我が家のルーツや文化を伝えられますね。変わった味を楽しみたい場合には、元旦は夫の実家の味で祝い、2日は妻の実家の味にして、子どもが好む変わり種レシピは、我が家の雑煮に飽きてきたころに取り入れるというふうに、本質を知った上で、譲れないものを大切にすると良いでしょう。

また、お雑煮を食べるときは、祝い箸(両口箸で、片方を神様用と考えます)を使うことで、子どもにも「神人共食」の文化がわかりやすく教えられます。こうして雑煮を食べながら、「このお餅が1年間頑張る力になるんだよ」「うちの雑煮は……」と声がけすると、子どもの気力につながり、大人になって文化の背景を知ったときに、親のありがたみをしみじみ感じるようになると思います。


>>>「行事育」具体例2:こどもの日/端午の節句

※この記事は【親子の根っこをはぐくむ 和文化研究家・三浦康子の「行事育」メソッド】コンテンツのひとつです。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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