「行事育」五つの力:元気になる
行事には、古来より元気になるシステムがそなわっています
古来より、ハレ(晴れ)とケ(褻)という概念があるのをご存じの方も多いと思います。ハレは年中行事やお祭りなどの非日常をさし、ケは仕事などの日常をさしています。平凡な日常が続くとだんだん気力が枯れてしまいませんか? 気が枯れた状態がケガレ(気枯れ)であり、精神的なパワーが弱いので汚れやすくなると考えられてきました。そうして気が病むと「病気」になりやすいのです。
こんなときは、ゆっくり休んで、おいしいものを食べて、気晴らしするのがいちばん。そうすると気が元にもどるから「元気」になります。そこで、所々に行事があり、仕事を休んで祭りを行い、晴れ着を着て、晴れの場に臨み、ご馳走を食べて、元気になって日常の暮らしに戻りました。こうしてハレとケを繰り返しながら、日本人は生きてきたわけです。
また、こうした祭りは神様への祀りごとでもあったので、感謝と祈りを捧げることは、気力を整え元気になることにも通じました。ですから、行事には必ずお供えものがあり、これがいわゆる行事食として食文化を支えています。「桃の節句」のように現在は「節句」と書きますが、本来「節供」と書くのは、お供えものをすることや、お供えものを食べて元気になることが行事の本意だったことを示しています。節供料理というのは、栄養をとるだけではなく、旬のものから“気”をいただく役目があるわけです。
今でも、行事の内容は薄れても行事食だけは残っている例は多いですし、食べ物ですから取り入れるのも簡単ですね。たとえ正月らしいことができなくても、お節料理やお雑煮だけは食べる……これは間違っていないのです。食文化を伝えるという意味でも、行事食は大事にしてください。
現代は気晴らしできるレジャーがたくさんありますが、「行事育」には、本来の意の気晴らしとたくさんの付加価値があります。とくに、親の愛情に包まれているという実感は、子どもの力になるでしょう。そう思うと、元気の本質を感じませんか。生涯続く幸せを思うと、ますます元気になりそうですね。
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※この記事は【親子の根っこをはぐくむ 和文化研究家・三浦康子の「行事育」メソッド】コンテンツのひとつです。