キャリア開発では「現在指向」と「未来指向」、
二つの時間的展望を考える

キャリア開発研修などで、「在りたい姿」を描き、そこに辿り着くための道筋(アクションプラン)を立て、継続的に行動していくというアプローチが一般化しているように思います。基本的には賛成ですが、必ずしも万人に適用できるやり方とは言えないでしょう。上記のようなアプローチを「未来指向型」とすれば、「現在指向型」のアプローチもまた、キャリアプランを考える上で有効な手段として存在します。

「時間的展望」とは何か?

私たちは過去を回想したり、未来を展望したりして、現在を生きています。

私たちは過去を回想したり、未来を展望したりして、現在を生きています。

私たちが実際に存在するのは現在だけですが、人間はしばしば過去の出来事を振り返りますし、自分の将来について思いを馳せることもあります。このように過去を回想したり、将来を展望したりすることを心理学者のレヴィンは「時間的展望」と呼びました。

「時間的展望」とはわかりやすくいえば、過去が現在につながっている、そして現在が未来につながっているという意識のことなのでしょう。

人間は長期的な目標を持つことによって、現在の生活の充実につなげることができます。その意味で、ビジョン(夢や目標)を持つことは確かに大切でしょう。将来のヒントは、必ず過去や現在の自分の中に埋め込まれているので、「在りたい姿」を思い描くには、まず「今の自分」をよく知ることが必要です。

キャリアを育むうえで重要なことは、「在りたい姿」を描くことそれ自体よりも、現在と将来をうまく連携させることではないでしょうか。そのためには、夢や目標を設定し、その実現を目指して努力を継続していくというやり方が唯一のアプローチというわけではありません。

「今の自分」を延長していくことで「在りたい姿」につなげるという方法も考えられます。演繹的なアプローチと帰納法的なアプローチとの違いでしょう。