米産地偽装事件にみる名門企業経営の落とし穴

「コンプライアンスは組織存続の必須要件」の項で、組織マネジメントに先立つ存在としてのコンプライアンス(法令順守)の重要性についてお話ししましたが、コンプライアンスを軽視したがために、大きなダメ―ジを被ることになった企業事例が相次いで発生しましたので、企業タイプ別コンプライアンス管理のヒントとして取り上げておきます。

解説

米の産地偽装は許されざるコンプラ違反

ひとつめは、三重県の老舗米穀販売企業三瀧商事が長年にわたって「国産米」として業者に納品されていた米が、実は中国産米や米国産米に加えて加工米までが相当量混ぜられていたという事件。大手スーパーなどのおにぎりやお弁当として大量に流通していたとして、大きな波紋を呼びました。食品の産地偽装は明らかなコンプライアンス違反です。この事件における最大のポイントは、当事者である三瀧商事が創業100年を越える老舗の名門企業であるという点です。トップの女性社長は、地元四日市市から産業功労者表彰を受けたほか、地元商工会議所の女性部会長を務めるなど、地元の名士でもありました。そんな名門企業で、なぜ長年にわたるコンプライアンス違反が起きてしまったのでしょう。

事件発覚時に新聞の取材に答えて社長は、「私は地域のことばかりにとらわれていて、仕事でこのようなことが起きたことに本当に驚いている」と話しています。私はここに老舗企業の組織マネジメントの落とし穴を見る気がしました。老舗企業や地域の名門企業は周囲から崇められることに馴れ、知らず知らず奢りや油断に起因する感覚麻痺状態から組織マネジメントが御留守になることがあるのです。代々築き上げてきた伝統に胡坐をかいて、トップが地域の公職や名誉職などにかまけ、実質マネジメント不在状態からリスク管理に甘さが生じるのです。名門企業におけるまさかのコンプライス違反はこうして起きるのです。

08年にも食べ残しの使いまわし問題で名門料亭「船場吉兆」が、廃業の憂き目に会いました。これもまた今回の事件と良く似た構図の老舗企業のコンプライアンス違反事例でした。老舗企業の組織マネジメントにおいては、新進気鋭の成長企業とは違った歴史ある企業ならではのリスク傾向が存在するのです。