理学療法士/理学療法士試験の問題傾向と対策

理学療法士(PT)国試 脳血管障害の問題傾向

脳血管障害は、社会的に発症件数も多く、後遺症に多くの方が悩まれている疾患です。理学療法士の国試の専門問題として当然、重視されていますが、加えて、現場で自身が患者さんを担当しているつもりで望む心構えが重要です。

野田 卓也

執筆者:野田 卓也

理学療法士試験ガイド

脳血管障害(国試)の問題傾向

脳血管障害に対する問題。当然、臨床の現場でも多くの患者さんが、脳卒中発症後、リハビリテーションや各療法に取り組まれており、その知識や技術について、多くの出題があります。主に脳血管障害に対する理学療法評価をはじめ、脳血管障害を起因とする高次脳機能障害、神経症状、運動機能障害、歩行機能障害、ADL指導など、症例をあげて考察を促す問題が多いです。また、頭部CTやMRIの画像問題出題率は高く、画像から、症状、状態を考察し、どういった訓練が有効か? など、連続で関連問題が出題されているのも近年の傾向です。
 

脳血管障害(国試)の過去問題と解答

過去問題 第51回(2016年)
脳卒中片麻痺に対する斜面台を用いた運動療法の目的で適切でないのはどれか。
  1. 内反尖足の予防
  2. 立位感覚の向上
  3. 覚醒レベルの向上
  4. 体幹筋筋力の維持
  5. 膝関節伸展筋の痙縮抑制

この答えは【5】になります。斜面台による運動療法では、選択肢にある、内反尖足の予防、立位感覚の向上、覚醒レベルの向上、体幹筋筋力の維持
が目的として適切になります。それ以外では、起立性低血圧の改善、抗重力筋促通などを目的とします。痙縮抑制にはなりません。

過去問題 第51回(2016年)
観念失行に関連する行為はどれか。
  1. 検査者のキツネの指を模倣する事ができない。
  2. 杖を持つときに上下を逆さまにして使おうとする。
  3. 麻痺が重度でもそれを意識せずに立ち上がろうとする。
  4. 歩行時、右に曲がるべきところで曲がらずに通り過ぎる。
  5. 「右足を先に出して」と教示してもできないが、自然な歩行が可能。

この答えは【2】になります。観念失行は、道具やモノの使い方や順序がわからなくなる障害です。選択肢の中では2がその状況に該当します。その他の選択肢ですが、1の検査者のキツネの指を模倣することができない。は、観念運動失行でみられる症状です。3の麻痺が重度でもそれを意識せずに立ち上がろうとする。という状態は、自身の身体の状態の理解が乏しい病態失認の状態です。4の歩行時、右に曲がるべきところで曲がらずに通り過ぎる。は、目的地への到達が困難になる地誌的失見当識が考えられます。5の動作指示に対して動作遂行が困難になるのは観念運動失行です。
 
 
過去問題 第50回(2015年)
65歳の男性。右利き。脳梗塞による片麻痺。脳梗塞による片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢、手指、下肢ともに3。回復期リハビリテーション病棟では車椅子で移動している。発症後 3か月の頭部 MRIを別に示す。
 
脳血管障害(理学療法士の国試)

昨年度も近年の傾向同様、画像を読み取り、その後に起こりうる現象や必要な訓練を選択させる問題が出ました。この傾向はしばらく続くでしょう。


A.出現しやすい症状はどれか。
  1. 観念失行
  2. 左右障害
  3. 純粋失読
  4. 半側空間無視
  5. 非流暢性失語

この答えは【4】になります。上記画像のみを判断材料に考察すると、梗塞部位は右側頭頂葉から側頭葉となります。選択肢の中からこの部位の障害で最も出現しやすい症状を選択すればよいです。この点を考えると、4の半側空間無視は右側頭頂葉(劣位半球頭頂葉)の障害で多くみられるため4が正解となります。この問題のケースの場合、左側の半側空間無視が発生しやすいといえます。その他の選択肢ですが、1の観念失行と2の左右障害は、左側(優位半球)頭頂葉障害で生じやすく、3の純粋失読は、左側(優位半球)の後頭葉(角回)もしくは脳梁の膨大部の障害で起こりやすいです。最後に、5の非流暢性失語は、左側(優位半球)前頭葉障害で起こりやすいです。

B.この患者が基本動作練習を開始した際に観察されるのはどれか。
  1. 左側からの方が起き上がりやすい。
  2. 座位練習で右手を支持に使うことができない。
  3. 立位保持では両下肢に均等に荷重ができる。
  4. 車椅子駆動の際に廊下の左壁によくぶつかる。
  5. 練習を繰り返しても装具装着の手順を間違える

この答えは【4】です。問いAの解答で出た左半側空間無視から予測される症状を選択します。その点を考えると、訓練昼夜に事情生活の中で、左側にある物体に注意が向かないという事が症状として表れやすいといえます。以上の点から、4が選択肢としては最も起こりうる症状ということがわかると思います。その他の選択肢ですが、麻痺が左側にあり、Brunnstrom法ステージレベルが上肢、手指、下肢ともに3であることから、左側に起き上るのは右に比べ困難感があると想像できる。また、両下肢均等荷重も困難な状態だと想定できる。その点から、1.3は間違い。2については、問いの麻痺側は脳画像、問題の記載から、左側と判断でき、右脳に異常所見を認めないことから間違いと判断します。5の選択肢の症状は、道具などをうまく使えない観念失行の症状であり、これは左側(優位半球)頭頂葉障害で発生する為、間違いと言えます。

過去問題 第50回(2015年)
前大脳動脈閉塞で最も生じやすい症状はどれか。
  1. 観念運動失行
  2. 強制把握現象
  3. 地誌的失見当
  4. 着衣失行
  5. 物体失認

この答えは【2】になります。前大脳動脈が支配する脳領域は前頭葉および、頭頂葉内側面とされるため、この領域の障害で起こるものが正解となります。選択肢の中では、2の強制把握反射がこれに該当しますが、その他にも、片側の運動麻痺、感覚麻痺。精神活動低下、吸引反射、前頭葉性運動失調などがみられる場合があります。

なお、その他の選択肢ですが、1の観念運動失行は頭頂葉障害。3の地誌的失見当は右側頭葉から後頭葉(海馬傍回後部、舌状回前部) の障害。4の着衣失行は、右頭頂葉の障害。5の物体失認は左後頭葉や側頭葉後部の障害で起こりやすいとされます。

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