認知機能評価とは?

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認知機能評価とは


認知機能評価とは、精神機能評価のことで認知症の症状(記憶障害、構成障害)などを評価することを意味します。日本において理学療法士が関わる対象者は、御高齢であったり、脳卒中、交通外傷などにより認知機能面に障害を抱えた方が多いです。その認知機能面の障害度で生活環境への配慮や家族の関わり方、医療介護職の関わり方、介護量も変化しますので、注意深く評価する必要があります。

ではさっそく、実習で使われることの多い、2つの認知機能評価の方法、目的について御案内します。

何が違う?長谷川式簡易知能評価スケールとMMSE

■長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)
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各質問には正解に応じた点数が割り振られておりこの点数で認知度の状態を判断します。


最も多く用いられている評価法です。運動性検査はなく、9つの項目について口頭にて質問形式により実施します。質問内容については画像の評価用紙をご参照ください。なお、各質問では以下の事を確認しています。

  • 年齢、日付、場所 :自己、日時、場所の見当識
  • 3つの言葉:記銘力、遅延再生
  • 計算 :知的能力
  • 数字の逆唱 :記憶、記銘力
  • 5つの品物 :注意力、集中力

満点は30点。点数が低いほど認知機能障害を有する可能性が高いとされ、一般に 20点以下は認知症疑いとされます。 また、参考値(臨床的各重症度群平均値±標準偏差)は、以下の通りです。

  • 正常:24.3(±3.9)
  • 軽度:19.1(±5.0)
  • 中等度:15.4(±3.7)
  • 高度:10.7(±5.4)
  • 非常に高度:4.0(±2.6)

■MMSE(ミニメンタルステートテスト)

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筆記の項目があるのが特徴的。脳血管型認知症の場合など高次脳機能障害も併発しやすいので、高次脳機能を簡易的に評価する場合、よく活用されます。


長谷川式簡易知能評価スケール同様に満点は30点ですが、質問項目は2つ多くなっています。質問内容は長谷川式とほぼ同様ですが、追加項目により以下の能力についての評価が加わります。

  • 紙に書いてある指示に従い指示通りの動作を行う:感覚性言語能力、失読、肢節運動失行など
  • 筆記用具を使い紙に文章を書いてもらう:運動性言語能力、失書、観念失行など
  • 図形の模写:構成失行、失認など

これによって、長谷川式簡易知能評価スケールより高次脳機能障害(失語・失認)に関して評価する事ができます。なお、MMSEも減点方式での評価になり、点数による評価は以下のようになります。

  • 27~30点:正常値
  • 22~26点:軽度認知障害の疑い
  • 21点以下:認知症の疑い

質問式認知機能評価で大切な事

長谷川式簡易知能評価スケールとMMSE。この2つの評価法はどちらも質問式評価ですので、評価を行う際は対象者の心理に配慮する必要があります。というのは質問式では簡便な質問が続くため「当たり前のことばかり聞いて馬鹿にしているのか」といった訴えや「こんなことをする必要はない」といった反発に繋がる可能性があるためです。

ですので、長谷川式簡易知能評価スケールとMMSEを実施する際は、対象者の精神心理、身体的にも落ち着いた状態の時に行い、評価する場所も第三者のいない静かな場所で行うのが望ましいです。

認知機能評価は多面的に行う

実習では質問式評価のみを実施する事が多いのですが、より詳細に認知機能評価を行うには「N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)」や「認知症機能評価別病期分類(FAST)」を用いて、日常生活の行動変化や自立度を観察する行動評価を併用し、生活ベースでの認知症の影響も評価する事が認知機能評価として重要になります。

というのは、質問式評価で認知症の疑いを点数に応じて判断したところで、実生活への影響がみえてこなければ、評価の意味はないからです。また、質問式評価では視覚、聴覚に障害がある場合、評価困難になりますが、行動評価では評価可能です。

■N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)
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筆記の項目があるのが特徴的。脳血管型認知症の場合など高次脳機能障害も併発しやすいので、高次脳機能を簡易的に評価する場合、よく活用されます。


N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)は、認知症の可能性があると思われる対象者に対し、日常生活動作を観察し、項目別に加点することで知的機能を評価する簡易テストです。質問式のように場所を選ばず、対象者の協力を得られなくても可能な為、評価しやすいといえます。ただし、評価しやすい分、評価者の主観が強くなり、評価に客観性が少なくなる事。家族など周囲の支援者からの情報提供量により加点にばらつきがでることが考えられます。

なお、評価項目は以下の5項目で構成され、この5項目を7段階で配点し、その総合点に応じ認知症の重症度を評価します。

  • 家事・身辺整理
  • 関心・意欲・交流
  • 会話
  • 記銘・記憶
  • 見当識

加えて、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)は寝たきりの対象者にも「会話」「記銘・記憶」「見当識」の3項目で評価ができるようになっています。これに関しては右図をご参照ください。

■認知症機能評価別病期分類(FAST)
認知症機能評価別病期分類(FAST)は、認知症の重症度を生活の中で見られる行動から7段階に評価します。基本的にアルツハイマー型認知症の評価として開発されましたが、一般的な認知症にも適応しています。また、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)同様、評価に対し協力を必要とせず、視覚や聴覚障害の方にも適用できます。7段階の評価については以下の通りです。

1.正常
  • 主観的にも客観的にも機能低下なし

2.年齢相応
  • 物の置き忘れの訴え、喚語困難

3.境界状態
  • 他人が見て、仕事の効率低下がわかる
  • 日常生活では機能低下は顕在化しない

4.軽度のアルツハイマー型認知症
  • 社会生活・対人関係で支障を来す
  • 将来の計画を立てたり、段取りをつけることができない
  • 日常生活では支障は目立たない
  • 時間の見当識障害あり
  • しばしば、うつ状態
  • 服薬の管理は困難
  • 物盗られ妄想で気づかれることがある
  • カードで買い物ができない
  • 特定のところ以外は電話ができない
  • 銀行通帳の取扱いは困難

5.中等度のアルツハイマー型認知症
  • 日常生活でも介助が必要
  • 気候に合った服を選んで着ることができない
  • 理由なく、着替えや入浴を嫌がる
  • 場所の見当識障害
  • 帰宅妄想
  • やたらに外出しようとする

6.やや高度のアルツハイマー型認知症
  • 不適切な着衣、着衣に介助が必要
  • 靴ひも、ネクタイは結べない
  • 入浴しても、体を洗うことは困難
  • 人物の見当識障害(同居していない家族)
  • 徘徊

7.高度のアルツハイマー型認知症日常生活でも常に介助が必要
  • 同居している家族もわからなくなる
  • 簡単な指示も理解できない

認知機能評価で考えることは

今回は、実習の際に使われることの多い認知機能評価や役立ててほしい評価をお伝えしましたが、認知機能評価で大切な事は評価結果で「この方は認知症です」と断定する事ではありません。対象者の認知機能に応じ、御家族も含め「より楽しみを持って生活していただくには?」という事を考えることです。

そして、認知症進行予防も含め、認知機能の影響を加味した生活提案、機能訓練、生活環境設定を支援することが、理学療法士として関わる上で大切になります。実習では精一杯、その点を考えて患者さん、利用者さんに関わって頂けたらと思います。

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