宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第19回は、第37条(書面の交付)についてみていくことにしましょう。
(書面の交付) 第37条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、取引主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。 |
第37条書面の実態は…?
宅地建物取引業法第37条では、売買契約を締結したときに、宅地建物取引業者自らが当事者であればその相手方に対して、宅地建物取引業者が代理または媒介であれば売主および買主に対して、それぞれ一定事項を記載した書面の交付を義務付けています。これを「第37条書面」などともいいますが、私自身は20年以上不動産の売買契約実務に携わってきて、“純粋な”第37条書面を作成したことがありませんし、見たこともありません。
というのも、国土交通省の見解により「第37条に掲げる事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができる」とされているためです。
宅地建物取引業者が関与する売買契約では、ほぼ例外なく契約書が作成され、これが実質的に「第37条書面」の代わりとして扱われています。そのため、宅地建物取引業法の第37条は「書面の交付義務」というよりも「契約書の必須記載事項」を定めたものとして考えたほうが分かりやすいでしょう。
逆にいえば、宅地建物取引業者の作成する契約書が第37条の要件を満たしていないときには、宅地建物取引業法違反となる可能性があるわけです。
重要事項説明書との重複部分も省略は不可
第37条に規定された事項の多くは重要事項説明書の記載事項と重複しています。だからといって第37条書面=契約書への記載を省略することは認められていません。むしろ契約書に書かれた内容のほうが重要です。売買契約のとき、たいていは契約締結に先立って契約書に記載された条項の読み合わせが行なわれます。このときに「重要事項説明の内容と相違がないか」十分に注意することが必要です。
売買契約書には第37条に規定された事項以外のものや、重要事項説明書にはない部分も数多くあるため、契約の場でいきなり契約書を見せられたのでは分かりづらい部分も多いことでしょう。
可能であれば契約締結の数日前に重要事項説明書と売買契約書、その他の関係書類一式を入手して、事前にチェック、照合ができるようにしたいものです。近年はその要望に応じてくれる宅地建物取引業者も、次第に増えつつあるようです。
住宅ローン特約には要注意!
第35条(重要事項の説明等)のところでも説明しましたが、第37条でも同様に「当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」の記載義務が課せられているだけで、宅地建物取引業者のあっせん(提携ローンや金融機関の紹介など)によらない買主の自主ローン(買主が自分で選んだ金融機関等に申し込む場合)については規定されていません。買主の自主ローンであっても、もしその融資が承認されなければ買えないケースが大半でしょう。ところが売買契約書のなかに「住宅ローン特約」(融資不成立のときは白紙解除とする特約)がなければ、融資否認によって契約解除をするためには手付金を放棄(もしくは違約金の支払い)をするしかないのです。
多くの宅地建物取引業者は自主ローンかあっせんかに関わらず、売買契約書のなかに「住宅ローン特約」を盛り込んでくれるでしょうが、事前に十分なチェックをすることが欠かせません。油断は禁物です。
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