理学療法士/理学療法士試験の問題傾向と対策

人間発達学・小児科学(理学療法士)試験の問題傾向【出題問題付き】

人間発達学・小児科学の試験でどのような問題が出題されるかご存じですか?毎年、出題数は少ないものの小児専門問題に内容がつながるのがこの試験です。出題傾向に変化はあるのか、実際の過去の出題問題を見ながら傾向を年度ごとに追っていきたいと思います。

野田 卓也

執筆者:野田 卓也

理学療法士試験ガイド

人間発達学に関する試験の問題傾向

人間発達学の出題問題は主に、言語の発達、社会性の発達、粗大運動の発達、微細運動の発達、反射反応の発達といったものになります。これらは、専門問題である小児疾患にもつながるので、一緒に勉強すると小児疾患とのつながりも見えてきます。近年の出題傾向ですが、高齢者の疾患や特徴などを問う問題が増えてきています。理学療法士も介護保険下で働く人たちも増えてきており、より高齢者の特徴を知る必要があるということなのでしょう。また、その一方で取りこぼしのないように、過去問を確実にこなしていく事が重要だと考えられます。
 

人間発達学に関する試験の過去出題問題と解答

過去問題 第52回(2017年)
高齢者にみられる病態のうち、低栄養の関与が低いのはどれか。
  1. 貧血
  2. 褥瘡
  3. 大腿骨骨折
  4. サルコペニア
  5. 虚血性心疾患

この問題の答えは【4】になります。虚血性心疾患は低栄養に起因することは少なく、むしろ高栄養で高コレステロール血症などで発症することが多いです。その他の選択肢ですが、貧血は鉄、たんぱく質などの低下で起こりやすく、褥瘡は、たんぱく質、特にアルブミン値の低下がむくみを生じさせ、褥瘡のリスクを高めます。大腿骨骨折は、カルシウム量低下により起こりやすく、サルコペニアは、たんぱく質摂取量の低下により骨格筋筋量の低下を招きます。

過去問題 第52回(2017年)
高齢者の肺炎の特徴として正しいのはどれか。
  1. 高熱がみられる。
  2. 誤嚥性肺炎が多い。
  3. 肺尖部の病巣が多い。
  4. 咳反射の亢進がみられる。
  5. 死因となる例は減少している

この問題の答えは【1】になります。日本人の死亡原因として、肺炎の死亡率が高まっています。その一因として、超高齢化社会における嚥下機能低下と咳嗽反射の低下が挙げられます。これらはいずれも誤嚥性肺炎に直結しますので、そういった時事的要素を盛り込んだ問題といえるでしょう。ちなみに高齢者の肺炎では高熱は少ないです。また、病巣部位は、臥位の高齢者に多いため肺底部に多くみられます。

過去問題 第51回(2016年)
運動学習における結果の知識(KR)の指示について正しいのはどれか。
  1. 難しい課題では1試行ごとに提示すると学習効率が低下する。
  2. 運動の誤差修正を行えるようになっても継続する必要がある。
  3. 成人では学習パフォーマンスを向上させない。
  4. 誤りの大きさを提示すると有効である。
  5. 動機付けには効果がない。

この問題の答えは【4】になります。動作や運動の誤りを具体的に伝える事で運動パフォーマンスは向上します。その他の選択肢は全て逆になります。まず、1の選択肢ですが、難しい課題では1試行ごとに提示すると学習効率が上昇します。2は、運動の誤差修正を行えるようになった場合、自己の感覚フィードバックを利用した運動修正が機能しているので継続は不要です。また、成人でも学習パフォーマンスは向上するので3は誤り。動機付けには学習者に大きなモチベーションを与えるため効果はあります。よって5は間違いになります。


過去問題 第48回(2013年)
姿勢発達の順序を矢印で示す。正しいのはどれか。
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小児の発達段階。原始反射をはじめ、各反応もしっかり押さえておきましょう。


この答えは【5】になります。5は両手によるつかまり立ちから、片手支持による立位への変化がみられます。その他の選択肢ですが、すべて順序が逆になります。1は腹這いの状態から、両腕を使い上体を起こすのが順序として正しいです。2は右よりも左の方が四肢の筋力に加え、体幹筋力やバランス能力も必要で高度な動作になります。3は、仰向け状態後、臀部を持ちあげる動作という順序が正しいです。4は、右の方が体幹が不安定で、前方に倒れ気味ですが、左の方は、体幹筋力があり、やや回旋動作も可能になっていますので逆になります。

 

小児科学に関する試験の問題傾向

人間発達学と出題範囲が重なる小児科学。問題範囲としては新生児期から思春期までの発達や、先天異常などの小児疾患等が挙げられます。出題数は極めて少なく、近年の出題傾向に大きな変化はないです。しかし、人間発達学同様、専門問題である小児疾患とのつながりに加え、自閉症など精神医学にも通じる問題もある為、軽視できません。
 

小児科学に関する試験の過去出題問題と解答

過去問題 第51回(2016年)
Down症候群で正しいのはどれか。
  1. 転座型の場合は両親に転座があることは少ない。
  2. 出現頻度は母親の出産年齢に影響されない。
  3. 21番染色体の異常がみられる。
  4. 両親に対する愛着は少ない。
  5. 知的障害はみられない。

この問題の答えは【3】になります。Down症候群では21番染色体に異常がみられます。その他の選択肢ですが、1の転座とは、染色体の一部が切断されて、同じ染色体の他の部分や他の染色体に付着融合することです。転座型の場合、その多くは両親に転座がある事が多いです。2の母親の年齢による出現頻度は、高齢になるほど高くなります。4の両親に対する愛着が少ないということはありません。5の知的障害はみられるのが特徴です。

過去問題 第49回(2014年)
脳性麻痺の周産期における危険因子として可能性が低いのはどれか
  1. 緊急帝王切開による出生
  2. 脳室周囲白質軟化症
  3. 低カリウム血症
  4. 新生児仮死
  5. 低血糖

この答えは【3】になります。脳性麻痺周産期における危険因子として、感染症、分晩時トラブル、脳室周囲白質軟化症、代謝異常を起因とする中枢神経損傷、新生児仮死などがあります。この点から、3以外の選択肢はこれに当てはまります。

過去問題 第50回(2015年)
小児の正常発達で最も早く可能になるのはどれか。
  1. 手掌握り
  2. 高這い運動
  3. 1人で座る
  4. つかまり立ち
  5. バイバイをする

この問題の答えは【1】になります。小児の発達段階において獲得される動作の順番が頭に入っていればさほど苦労はしないと思います。1の手掌握りは、おおよそ6ヶ月ほどで獲得されます。他の選択肢の動作獲得はおおよそ以下の通りになります。

高這い運動⇒生後約8カ月
1人で座る⇒生後約7カ月
つかまり立ち⇒生後約9カ月
バイバイをする⇒生後約10カ月


過去問題 第50回(2015年)
物につかまらず立てる乳児においてみられるのはどれか。
  1. 自動歩行
  2. Moro反射
  3. 手掌把握反射
  4. パラシュート反応
  5. 非対称性緊張性頚反射


この問題の答えは【4】になります。この問題では、問いにある「物につかまらず立てる乳児において」というのがポイントになります。この時期は、おおよそ1歳ぐらいというのがまず理解できないと正答を答える事はできません。4のパラシュート反応以外の出現時期は以下のようになります。

自動歩行⇒生後約1から2カ月
Moro反射⇒生後約4から6カ月
手掌把握反射⇒生後約1から2カ月
非対称性緊張性頚反射⇒生後約4から6カ月

過去問題 第48回(2013年)
小児を急に頭の方から前方に倒した時に、図のような反応が出現する最も早い時期はどれか
 
小児科学

文章からイメージする事もあれば、このように図を見てその反応はなにか? という問題もあります。これは、専門問題の小児疾患でもみられます。

 
  1. 生後2-4か月
  2. 生後6-8か月
  3. 生後12-14か月
  4. 生後16-18か月
  5. 生後20-22か月

この問題の答えは【2】になります。図は急に前方に倒されると上肢を伸展し、かつ手の指を外転・伸展して頭部を保護しようとする保護伸展反応を見ているもので、通常は生後6か月頃から見られる反応になります。
 

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