組織マネジメントにおける「管理者」の重要性

組織マネジメントを有効にする「管理者」の役割とは

「管理者」の自覚には権限と責任の委譲は不可欠

今回は組織マネジメントにおける人的な管理面に少し焦点をあててみます。一般的にリーダーを軸とする「1対全員」の“集団”から「組織」に移行する際には、管理の必要上から人的な職位のピラミッド構造が形成されます。企業で言うなら、社長→役員→部長→課長→係長→担当者というピラミッド。一言で簡単に言うなら、社長を頂点として中間に「管理者」の階層が存在し、その下に担当者が配置される構造です。

このように「1対全員」の構造が「ピラミッド組織」に移行する際、当然重要になるのは移行に伴い新たに誕生する「管理者」の存在です。この「管理者」が単なる伝達役としてしか機能しないなら実質的に担当者となんら変わらず、それは組織マネジメントとは程遠いものであると言っていいでしょう。古い体質の中小企業にはいまだに、この手の “名ばかり部長”“名ばかり課長”が間々存在します。これは組織マネジメントにおける「管理者」の重要性とその何たるかを正しく理解せず、あるべき役割を与えていない経営トップの過ちであるとも言えるのです。

では「管理者」の役割とは何でしょう。「管理」の辞書的意味は、「管轄し処理すること。とりしきること」です。すなわち、ただ単にトップの言うことを下に伝えるだけでは「管理」していることにならず、自己の管理スパンにおいて上位者の意思を受けしっかりと遂行せしめること、自らとりしきり処理を管轄すること、なのです。そのために必要なことは、「管理者」としての自覚や意識とも言い換えられる責任感をしっかりと持たせることなのです。

次にこの管理者としての責任感をいかにして持たせるのかですが、これは「権限」と「責任」をセットで移譲すること以外にありません。 “名ばかり部長”“名ばかり課長”が存在する組織では、往々にしてこの「権限」と「責任」の移譲ができていないのです。結局全何事も社長が独断で決めている、問題発生時も「管理者」を叱りつけるだけでその「責任」を負わせることなく、社長自身がすべての「責任」を引き受けてことを終わらせてしまう等、「権限」も「責任」も全く移譲されていない状況がまかり通ってしまっているのです。
 

企業破綻した日航再建のキーマンも「管理者」だった

組織マネジメントを有効にする「管理者」の役割とは

日航再建でもキーマンは「管理者」だった

「組織」風土改革をおこなう、「組織」運営を改善する、などの作業に際してもその成否のカギを握るのは当然「管理者」であるということになります。トップが思い描き実現を切望する改革や改善に対して、「管理者」がその真意を正しく理解した上で自己の管理スパンにおいて下位者へ同様の意識づけをしないなら、トップが志す組織の改革や改善は空回りし決して前に進むことはないでしょう。「管理者」の理解をもってはじめて、改革、改善は成就に向けて動き出すことができるのです。

具体例をあげるなら、企業破綻から見事な再生を果たした日本航空です。その再生を指導した稲盛和夫氏は、「日本航空の改革を成功させるためには何よりもリーダーたる「管理者」の意識づけこそが重要である」と考え自ら直接働きかけました。破綻へとつながった官僚的組織風土を根本から変革させるために氏が真っ先にしたことは、「幹部社員を集め、1か月間にわたり人間としての生き方や哲学を説くこと」でした。改革のキーマンたる「管理者」の意識を変えるべく、人間としての基本から再認識を促すような「フィロソフィー」の刷り込みをおこなったのです。

「リーダーたる「管理者」によっていかなる企業の浮沈も左右される」は、稲盛氏の豊富な経営者経験に裏打ちされた持論です。「管理者」に求められる資質に関しては、「ビジョンとミッション、哲学を持ち共有し、それを実現する仕組みを構築できること」であると説いています。そして日航の再建がうまく運んだ一番の理由は、「私の考えが次第にリーダー(管理者)たちに受け入れられ、彼らを通じて死の淵を見た全社員が後には引けないという気持ちを持ってくれたこと」であると話しているのです。

どんなに優秀な経営者であろうとも、一人で組織のパワーを存分に発揮させ一層の発展軌道に乗せることは不可能です。成功する組織マネジメントには、理念やビジョンを共有する「管理者」の存在が欠かせないのです。

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