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中村恩恵×首藤康之インタビュー!(2ページ目)

2009年より創作活動を共にし、上質なデュエット作品を発表し続けている中村恩恵さんと首藤康之さん。この秋には、最新作『小さな家 UNE PETITE MAISON』、一昨年上演し高い評価を得た『Shakespeare THE SONNETS』の2作を披露し、さらなる境地を見せつけます。ここでは、10月に開幕を控えたお二人にインタビュー! 創作の過程、そして作品への想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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美術セットもやはり、コルビュジエに因んだものになるのでしょうか。

首藤>『Shakespeare THE SONNETS』のときは、美術というよりも、シンプルな空間で、衣装自体が芸術のようなイメージでつくってました。ただ『小さな家 UNE PETITE MAISON』に関しては、まずコルビュジエの“モデュロール”という寸法が基盤にあって。183cmの人間が手を伸ばしたときに、届くのが226cmの高さで、おヘソは必ず113cmの位置にあるという、コルビュジエがつくった黄金比です。
中村>そこから、人間が椅子に座るときの高さとか、座る角度とか、生活するための数値を出していったという……。
首藤>すごく数学的なんです。
中村>そうなんですよね。人体を基にしているんだけど、非常に数学的な比率になってる。そうやって生まれたのが、彼が最後に過ごした部屋の寸法で、今回のセットはそれと同じ大きさになっています。すごく小さいですよね。
首藤>八畳くらいしかない。フランスを代表する建築家が最後に夫婦で住んだ家が、この八畳くらいの家だったんです。
中村>意外すぎますよね。コルビュジエって信じられないほど大きな都市計画とか、壮大なもの、すごく大きい建物をつくってるイメージがあるのに。
首藤>でも一番心地良い場所が、これだったという。ここに、全ての豊かなものがそろっていると。窓の外を見れば、地中海が広がっていたり……。
中村>しかも、コンクリートではなく木が張ってあって。これも意外なんです。
首藤>手がけてきたものは全部コンクリートなのに、自分の家は木でつくってる。それがまた、すごく温かいんです。とても有機的な感じがして。
中村>オーガニックで、ポエティックで。
首藤>人間味に溢れてる。全て数値であらわされているのに、実はすごくポエティック。本人もそう言ってるんですよね。
中村>完全さということを追求してはいるけれど、数学的ということは、実はすごく詩的なことなんだと。
首藤>すごくロマンがあるし、すごく人間的だなって感じます。例えば“住宅は住む機械である”と言っているように、彼が残した言葉は一見するととても冷たかったり、挑戦的に感じたりする。でもそれをひとつひとつ解いていくと、彼の温かみ、人間愛が溢れていて……。作品をつくればつくるほど、今そのギャップに悩まされているところです(笑)。

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コルビュジエの手掛けた国立西洋美術館本館  撮影:新良太



創作はどのように進めていますか?

首藤>二人で話し合いつつ、流れを決めたり……。
中村>そうですね。“こういう動きをしてください”っていう振付けではなく、二人で探しながらやってる感じです。
首藤>二人で何ができるのかを探しているというか。今回は特に、建築であったり、水平や垂直ということを扱っていて、力学的なものや数学的なことが関わってくるので……。
中村>垂直や水平、力学、スパイラルとか、数学的なルールにのっとっていて、それを身体化するとどうなんだろうと。クリエーションにしても、これまで確かじゃないけど大事にしていた要素とか、動きのエレメントがより明確になったというか。もともとやっていたことを、もう一度検証しなおすような作業ですね。実際にストラクチャーを考えるときは、“こういう構成だったらいいな”という風にあくまでも念入りに練っていきます。でもそれを身体化していくと、“あれ、なんかちょっと違うんじゃない?”“ここにはもしかしたらこういう伏線があるのかな?”なんて、つくりはじめて気づく部分も沢山ある。そうすると、ストラクチャーの全体的な見直しをまたしたり、というのが必要になってくる。
首藤>毎日クリエーションが終わって、家に帰るとまた見直して。
中村>それで次の朝になると、“ねぇ、昨日の夜閃いたんだけど”って言ったりしてる(笑)。
首藤>今日も、会った瞬間その話(笑)。“あそこってこういうことだよね”“じゃあそういこう”って。もしかしたら、また明日も変わるかもしれない。“きっとコルビュジエはこう思ったんじゃない?”とか……。

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『Shakespeare THE SONNETS』 
撮影:鹿摩隆司



楽曲は本作のためのオリジナルですね。振付けとの関係性は? 
どのような作業でつくられているのでしょう?

中村>最初に振りをつくる前に、“この作品ではこういうことをお願いしたくて、方法論としてはこういうアプローチを取っていく”というのを、まず(音楽を手掛ける)ディルクさんに伝えています。それを受けて、彼が音楽的にはどういうアプローチを取るかという方法論を決めるんです。そこである程度方法論が決まってきたら、各セクションで具体的に割っていき、各セクションで必要なことやあらわしたいことを伝えていって……。
首藤>下準備がいろいろ必要なんです。
中村>音にしても、こういう楽器を使おうかとか、こういう音素材を使おうという下準備がいる。今までの作品では生音だったり、歌や演奏したりしたものを録音して使ったこともありましたけど、今回の音源は基本的にサンプルです。すでにある音を、一個一個組み合わせてつくっています。
首藤>ディルクさんは中村さんと長い間一緒に仕事をしてるから、何がしたいか大体わかってくれるんですよね。
中村>ネザーランド・ダンス・シアターの頃からなので、二十年来の付き合いになりますね。
首藤>僕らのデュオでは、『時の庭』、『Shakespeare THE SONNETS』、そして今回で三作品目。いつも、こちらがイメージした以上のものを音としてつくってくれて。
中村>クリエーションでは、ひとつのシーンのテンポ感みたいなのをまず彼に無音で見てもらって、同時進行で音楽をつけてもらっています。そこでできた音楽を受けて、また私たちがインスピレーションでやって。私たちが練習したものを彼が見て、また自分の音楽に置き換えたり、またこちらも変わったり……。
首藤>ひとつ振りをつくってはそれを彼に持って行ったりと、行ったりきたりして。
中村>スタジオで、私たちが動きをつくって、その都度彼に見せていく。本当に、動きと音楽が一緒の作業。リアルタイムで、同じ現場でつくっている感じですね。


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