園山真希絵氏の新店「豆園~ebisu sonoyama~」
食プロデューサーの園山真希絵さんが9月9日にオープンする和菓子店「豆園~ebisu sonoyama~」(まめぞの えびすそのやま)。オープンに先駆け開催された内覧会でお話を伺って来ました。「豆園~ebisu sonoyama~」と「園山」
和菓子店「豆園~ebisu sonoyama~」(以下、「豆園」)がオープンしたのは、今年2月に閉店した園山さんの家庭料理割烹「園山」と同じ東京・恵比寿。割烹は隠れ家的な場所にありましたが「豆園」があるのはJR恵比寿駅からほど近いエビスストアー内。園山さんの出身地、島根県出雲市の一部の地域では小豆のお雑煮で新年を祝う習慣があり、園山家でも代々甘いぜんざいでお正月を祝ってきたのだそうです。古来小豆の赤色は厄を払うとされてきたことに因み、小豆を使った和菓子を縁起の良いお菓子と捉える園山さん。同様にお正月には欠かせない黒豆も使い、縁起の良い和菓子のお店として「豆園」をオープンすることにしたのだそう。
5坪のテイクアウトのみの小さな店舗で、まずは店名と同じきんつば「豆園」と黒豆ハーブティ「Btea」(1箱3,675円)の2品からのスタートです。
きんつば「豆園」
豆園唯一のお菓子、きんつば「豆園」は1個350円(税抜)。ただしご縁結びのお菓子になって欲しいからとばら売りはせず、2個・5個・10個入りでの販売です。恵比寿という立地を考えてもやや高めの価格設定に驚きましたが、「材料にこだわっているため、これでもギリギリ」とのこと。
使用しているのは十勝産の小豆、島根県産の黒豆、素焚糖(すだきとう)、滋賀県産の小麦粉に豆乳。
「豆園」は、黒豆と小豆を別々に煮て少量の粉寒天で固め、豆乳で溶いた小麦粉をつけて焼いたもの。石川県の工場から毎日1,500~1,600個届けられる予定だそうです。
もっちりとした生地の中には、少し形の残った小豆と幾粒かの黒豆。豆の風味がそのまま閉じ込められているという印象で、ミネラル分を多く含む素焚糖ならではの素朴な風味のためか、懐かしさを感じる後味です。なお今後はお菓子の種類を少しずつ増やしていく予定とのこと。
「和菓子」とは
明治時代に西洋から伝わった洋菓子に対するものとして使われてきた「和菓子」という言葉。和菓子は餅や団子を原型に、奈良・平安時代に唐から伝わった「唐菓子」や鎌倉時代に禅僧が伝えたとされる饅頭や羊羹などの「点心」、戦国時代にポルトガルやスペインから伝わったカステラなどの「南蛮菓子」など、外国の食品に大きな影響を受けながら日本独自のお菓子として発展してきました。和菓子の魅力は味や形だけではなく、その歴史的、文化的な背景にもあるように思います。何百年もの歴史を持つ老舗和菓子店も少なくなく、修業を積んだ職人さんの手で生み出される伝統的な和菓子は五感の芸術と称されることも。美しい菓銘の付いた煉切などの上生菓子を前にすると、伝統美だなと感じます。
和菓子は一見すると安定した人気を誇っているようにも見えますが、実際は消費者の和菓子離れや後継者問題から閉店するお店も少なくありません。自宅で小豆を煮たりお団子を作ったりする人が少なくなっている今、和菓子に親しまずに育った人も多いのでは。我が町の小さな和菓子屋さんに入ったことがなかったり、デパ地下で目にする老舗和菓子店に敷居の高さを感じたりという声も耳にします。
一方で最近印象的なのは、乳製品やスパイス、チョコレートなど洋の素材や手法、デザインを積極的に取り入れた新しい解釈の和のお菓子や、今回お邪魔した「豆園」のように、オーナーのこだわりを反映した小さな和のお菓子店が次々オープンし、人気を博していること。著名人や人気デザイナーが手掛けることで話題を呼ぶこともしばしばです。
そういった新しい和のお菓子は、熟練の職人さんの手による伝統的な和菓子とは少し違ったものかもしれませんが、和菓子に馴染みのなかった人にとって、楽しい入り口になるのではと感じます。
<参考>
『事典和菓子の世界』中山圭子著、岩波書店
<店舗情報>2015年3月16日より下記
■ 豆園 茶寮
所在地:東京都渋谷区恵比寿4丁目9-7 ABEビル恵比寿1F
電話/Fax: 03-5789-9899
営業時間:10:00~21:00(平日)、~20:00(土・祝)
定休日:日