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井手茂太最新作『麻痺 引き出し 嫉妬』インタビュー!(4ページ目)

コンテンポラリーダンス界の異彩・井手茂太さん率いるイデビアン・クルーが、この秋一年ぶりに舞台に登場! 最新作『麻痺 引き出し 嫉妬』を引っさげ、北九州と横浜の地を巡ります。ここでは、演出振付家であり、ダンサーの井手さんにインタビュー! 新作の行方と、その意気込みをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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Q.今回は横浜に加え、北九州でも上演されますね。この二カ所を選んだ経緯とは?

井手>北九州の劇場は、10年前に『くるみ割り人形』という作品で行っていて、それもあって今回お話をいただきました。でも実は、あの劇場ができる前から、北九州にはワークショップでしょっちゅう行ってたんです。“コンテンポラリー・ダンスとは何ぞや”というワークショップを一ヶ月間やって、最後にパフォーマンスを披露したり。そういう縁がある場所でもある。それに港・港で上演して、あえて東京でやらないのもオシャレかなと(笑)。うちのグループ名も“クルー”なので、船のような感じで北九州から横浜へ上がっていくというのも面白い。

あと、僕の地元が佐賀なんです。高校から福岡に行っていたりと、そういう意味でも縁があるし、九州は自分の中の引き出し的な部分でもある。あの若さって何だったんだろうって、体力的なものではなく、考え方、発想という意味で振り返ったりもする。ちょっと懐かしさも感じる場所で、原点という立ち位置でやってみてもいいんじゃないかと思ってるんです。


Q.地元の舞台に井手さんが立てば、ご家族も喜ばれるのでは?

井手>実は、ウチの家族はずっと僕が踊ってることを知らなくて(笑)。僕自身も実家にあまり情報を伝えてなかったし、ウチは佐賀の田舎なので、コンテンポラリーなんてまず知りませんよね。だから、“茂太は東京で踊りをやってるグループのマネージャーかスタッフでもしてるんだろう”って、ずっと思ってたみたい(笑)。

ここ最近は自分も舞台に出演するようになったり、映像に出たりしているので、もうバレてますけど。それも、僕が出たCMを見て知った感じ。“あれ、あんた?”って(笑)。だから本当に最近ですよ、“オマエも踊るんだ”と再認識されたのは(笑)。

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「出合頭」2011年(C)青木司


Q.今回は井手さん自身もダンサーとして登場しますね。出演作と振付けに徹する作品とでは、ご自身の中でどのような棲み分けがあるのでしょう?

井手>以前は振付けに専念したいと考えていて、基本的に僕は舞台には立っていませんでした。ただイデビアンを始めて10年目にシアター・トラムでソロの話があって、それと同時にイデビアンで新作をやったので、久しぶりに自分が出たことはあります。あと『不一致』というお葬式の作品で、ポッチャリしたおじさんのキャラクターがどうしても欲しくて、僕が出たという経緯もある。だから、自分が出ているのは本当に所々でしかないんです。

僕が舞台に出るようになったのは『排気口』から。だけどあの時も、最初は出る設定ではありませんでした。でも安藤洋子(ザ・フォーサイス・カンパニー)さんに、“出ようよ、動ける内に動かないとダメだよ!”って言われて。“世界の安藤洋子と踊れるんだったら、記念にちょっと出ちゃおうかな!”なんて思って出たら、そこから火がついちゃった(笑)。


Q.普段のトレーニングはどうされていますか?

井手>ジムに行ってます。水泳が好きで、事務所に行く途中でジムに寄っては“今日は1キロ泳いできた!”なんて自慢したり(笑)。あとは、エアロビクスを受けて、周りの反応を見たりするのも楽しくて。エアロビクスを受けてるひとたちって、おじさん、おばさんばかり。それが、しっかり踊るんです。

エアロビって、結構ハード。僕なんて、全然ついていけないですもん。踊りと全く違って、やっぱりスポーツなんですよね。僕は振付けの仕事をしてて、カウントをわざと外したりする。エアロビの場合はオンカウントなので、全部の音についていかないといけない。ずっと音に合わせて動きっぱなしだからシンドくて、“ここで“間”が欲しいな……”、なんて思ってると、すっかり遅れを取っちゃう。その横で、おばさんがクルクル回ったりしてるんですけど(笑)。


Q.イデビアン・クルーは結成して20年余り経ちますね。
舞台を観に来る方は、やはり固定ファンが多いですか?

井手>20年て、長いですよね! まだ続けられているのは素晴らしいことだし、続いてることに感謝です。お客さんも、昔から来てくれているひともいれば、最近は若いひとも来てくれたり、世代がいろいろ違ってきてる。よくダンス公演だと、いかにもダンサーですっていうひととか、ダンス好きなひとが来てるじゃないですか。だけどイデビアンの場合は、人種がごちゃごちゃしてるのが特徴(笑)。近頃は映像に出ることもあるので、そこから入って来てるひともいる。長くやってると客層もいろいろ変わってきて、それもまた面白いなって感じます。


Q.創作に際し、客層を意識することはありますか?

井手>サービス的な意味では意識しないけど、今って情報社会だから、いろんなことが沢山出回ってるし、お客さんの眼が肥えてると思う。それを逆手に取って、あえてベタなことをやったらどうなるかとか、いろいろ考えたりはします。全く意味のわからないような“間”をつくったらお客さんはどれだけついて来れるかなって考えて、“まだ動かないの?”みたいなものをやったり(笑)。

舞台芸術の仲間入りをさせてもらってはいるけれど、やっぱり僕は観に来るひとにとって、舞台で行われてることが遊び場であって欲しいんですよね。キレイなもの、カッコイイものを一生懸命練習してみせるというのは他に行けば一杯ある。だからこそ、僕らはとことん遊びたい。遊び心が伝わって、観ているひとにも妄想で遊んで欲しいという気持ちがあるんです。あと、僕らは東京をホームグラウンドにしてるけど、今回は神奈川でやる。そこまで都内から来るのは、よっぽど好きなひとなのかなと。じゃあ、何をやってもいいかなと(笑)。


Q.そうすると、今回は観客にとってハードルが高い作品になる感じ?

井手>基本的なものは、いつもと同じ。だけど、展開が早い。もちろん“間”もありますけど、いつもより短い。一瞬あって、またババッといく。前半から飛ばしていきます。

まず麻痺してるシーンがあって、引き出し部分のテーマがあって、それがポツッて途切れた時に嫉妬心が徐々に沸き上がってくるイメージ。だから麻痺と引き出しはある意味プラスの方向で、そのふたつがパッと消えた時に、だんだん炎上してくる感じ。コンパクトな時間に、詰め込むだけ詰め込めたらと。いつもの時間内に、二倍、三倍のものをガッと凝縮したいんです。


Q.みなさんには、頑張ってついて来てくれと?

井手>とにかくすごく展開が早いです。ついて来れないというか、“え、もう次に行っちゃうの??”っていう感じだと思う。頭で考えるのではなく、感じるがままに観て欲しいですね。

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    井手 茂太 さん




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