管理職はメール教育をうけず配属になった新入社員を含め課員全体に対して、メールの書き方を基本から教えていかなければなりません。また課単位や会社全体で統一するためにルールを決める必要があります。
2-1.件名(タイトル)の命名ルールを決める
件名(タイトル)を見たらメールを開かなくても内容が分かるように記載しましょう。スパムメールと間違われないよう自分の名前を入れるのもおすすめです。たとえば、「ABC株式会社の水谷です。発注書をお送りします。」とすると、件名で差出人とメールの用件が分かります。【ABC株式会社 水谷】のように【】を使って際立たせ、視認性を高めるのもおすすめです。例えば、打ち合わせであれば
【ABC株式会社 水谷】5月10日の打ち合わせ資料
【ABC株式会社 水谷】新宿支店・経営会議の検討項目
【水谷哲也】企画会議開催のご依頼
のように、日付や具体的な会議名を件名にいれます。こうすればスパムメールと間違えられて捨てられることはありません。
まちがっても「こんにちは」「お世話になります」「至急ご確認ください」「ご無沙汰しております」「大変申し訳ございません」「お詫び」「さきほどの件について」のような件名をつけては駄目。これらはすべてスパムメールで使われている件名です。スパムメールを送る側は、何とかメールを開かせようとビジネスでよく使う件名を考えて送ってきます。
件名を見ればどこの会社のメールか分かるようにすれば、捨てられることはありません。これもブランドの一つです。件名の命名ルールを会社全体で統一するようにしましょう。
2-2.返事を出す時は件名を書き換える
メールの返事を返す時の件名にも気を配りましょう。スパムメールを送る側はなんとかスパム排除をかいくぐろうと考えて、件名に「Re:」をつけて送ってきます。「Re:打ち合わせ」のような単純な件名をつけているとスパムメールと認識される可能性が高くなりますので、相手が「打ち合わせ」という件名で送ってきた場合は、本来は「Re:新宿支店・経営会議の打ち合わせ」などと書き換えるべきです。ただ、件名の書き換えはある意味、失礼にもあたり相手との信頼関係によりますので、初めての取引先とのメール返信の場合は、相手の件名をそのまま使った方が無難でしょう。相手と長くメールのやり取りをしていると、最初は会議の打合せ内容でしたが、途中から会議後の懇親会の場所決めに内容が変わっている場合があります。本文の内容と異なった件名になってしまった場合は単純に返信せず、新しい内容をあらわす件名に書き換えましょう。
GmailやWindows Liveメールを使っている場合、件名を基準にしてスレッドという単位でメールをまとめる機能があります。件名を変えると別のスレッドでまとめられますので、途中で懇親会の話題に変わったのなら件名を書き換え新しいスレッドで管理しましょう。
2-3.署名をつける
学生時代のメールに署名をつけることはまずありません。また携帯メールでは署名をつける習慣がありませんが、ビジネスメールでは署名をつけるのが基本。署名は名刺と同じで自分の所属を明らかにするためのものです。日本のインターネットは1984年、JUNETと呼ばれる実験ネットワークからスタートしました。参加者は大学の先生や企業の研究者、ITベンダーのエンジニアが多く、ここから自分の所属を明らかにする署名文化が生まれました。
会社全体でなく課単位でかまいませんので、署名のテンプレートを用意しておきましょう。各自バラバラでなく統一感がでますのでブランド力向上に寄与します。所属部署の電話番号やFAX番号を入れメール以外の連絡手段を記載しておくと、相手は署名を見るだけでメール以外の連絡方法が分かります。なかには携帯番号を記載し、「お急ぎの場合、携帯にお電話ください」と署名に書いている事例もあります。
長い署名は迷惑ですので長くても4、5行にまとめます。1行目には本文と署名の違いが分かるように区切り線をいれましょう。またいろいろな読みができる名前は読み方をいれます。
■署名例
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株式会社ABC 資材部第1課 東 俊一(ひがし しゅんいち)
TEL: 000-1111-2222 FAX: 000-1111-3333
E-Mail: higasi@abc.co.jp
URL: http://abc.co.jp/
署名にメールアドレス、URLを記載する場合は「URL: http://abc.co.jp/」と「URL:」の間に半角の空白を1文字以上入れます。署名にURLがあるとクリックするだけで、ホームページが表示されますが「URL:」との間に空白がないと「URL:」もホームページアドレスの一部と認識されてしまい、ホームページが見つからないとエラーになります。
メール本文にURLを記載する場合も同じで本文に「株式会社ABC(http://abc.co.jp/)」と書く人がいますが、クリックしてもエラーになってしまいます。記載するなら「株式会社ABC( http://abc.co.jp/ )」と括弧の前後に半角の空白を入れます。
署名はキャッチフレーズとしても活用できますので部門や会社で取り組んでいるキャンペーンがありましたら署名に記載しましょう。キャンペーンが終了したら、いつまでも掲載せず署名の修正を忘れないように。
2-4.送信者名は「会社名+名前」で設定
メールソフトの送信者名を設定しましょう。Outlook ExpressやWindows Liveメールを初めて起動すると設定画面が出ますが送信者名(表示名)の設定でローマ字のサンプル(例 Taro Chofu)が示されるため、そのままローマ字で設定している人が多くいます。また送信者名そのものを設定していない人も多く、設定しないと届いたメールの送信者名はメールアドレスそのものになっています。ビジネスでは、学生時代とは比較にならないほど、たくさんのスパムメールが届きます。スパムメールを遮断するソフトを会社で導入していますが、ソフトをかいくぐってスパムメールが届きます。当然、自社に届くのと同様に取引先にも大量のスパムメールが届いています。送信者がローマ字やメールアドレスだとスパムと判断されやすく、読まずに削除されるおそれがあります。スパムメールと間違われないよい漢字で送信者名を設定しなければなりません。
下記のように「会社名+名前」で送信者名を設定しましょう。会社名が長い場合は株式会社を省略します。会社全体で統一しておきます。
「株式会社ABC 水谷哲也」
「水谷哲也【株式会社ABC】」
「水谷哲也(株式会社ABC)」
2-5.ファイル添付の注意点
取引先へ見積書などをファイル添付して送ることがあります。本文にファイル添付の記載がないメールが多いのですが、一言、添付していることを添えましょう。例えばWord文章を添付するのなら「添付した見積書はWord2010で作成しています」とバージョンを記載して送ります。相手が古いWordバージョンを使っている場合も多いので、最新のdocx形式ではなくバージョンを落として保存し、doc形式で送る配慮も大切です。中身が文章だけならdoc形式の方が容量が少ないので送信に負荷をかけません。容量の大きなファイルを送る場合は送受信容量の制限に注意しなければなりません。1MB(メガバイト)を超えるのならファイルを圧縮し1MBにおさめて送りましょう。送る前に「容量が大きいので圧縮ファイルで送ってもかまいませんか」と相手に解凍できるリテラシーがあるか確認してください。また相手がパソコンを使っているとは限りません。携帯電話やスマホでメール受信している場合、相手に事前連絡した方が無難です。
取引先のサーバーが容量制限しているとメールが受取拒否となりエラーで戻ってきます。プロバイダーによっては、送受信するメールサイズに対して制限をかけている場合もあります。Yahoo!メールやGmailは25MBまでのメールが送れますが、受信側で古いパソコンを使っていると大きな添付ファイルのメールはダウンロードに時間がかかります。メール受信そのものが止まってしまい、パソコンがフリーズ状態となり強制終了するしか復旧できなくなります。立ち上げなおしてもメールソフトを開けるとダウンロードが始まって同じ状況になりますのでサーバーに直接入り、メールそのものを消すしかありません。相手にとっては手間もかかり迷惑なことになります。
1MBを超えるメールを送るのはマナー違反と考えファイル転送サービスを活用し、大容量ファイルを送りましょう。便利なのが「宅ふぁいる便」。1999年6月にサービスを開始した老舗です。もともとは大阪ガスの社員がメールで重たいファイルを取引先に送りたいと、当時、ネットで流行っていたグリーティングカードをヒントに考えたシステムです。
ネットのグリーティングカードはカードそのものではなく、カードがあるページのアドレスを電子メールで相手に送ります。相手はメールに記載されたアドレスをクリックし贈られたグリーティングカードを見ます。このカードの仕組みをファイル添付でできないかと考えました。宅配便のように伝票を書いて、荷物を運んでもらうイメージから宅ふぁいる便と名づけ開発。
宅ふぁいる便は、無料で使うことができ、メルマガや広告メールなどの広告収入で成り立っています。アップロードしたデータは大阪ガスグループのデータセンターにあるサーバーに保管されます。一回に送信できるファイルは最大10ファイルまで、ファイル容量は最大300MBで保存期間は72時間です。
ファイル転送サービスで、気をつけないといけないのが送信メールアドレスの記載ミス。送信するアドレスを間違えた場合、エラーになればまだよいのですが、間違って誰か知らない人にファイルが届いてしまったら大変。ヘタしたら秘密漏えいです。送信するメールアドレスは、手打ちするのではなくアドレス帳からコピー&ペーストするようにしましょう。
2-6.取引先へのメールは管理職のアドレスをCCに設定する
取引先とのメールで重要なやり取りは、上司のアドレスをメールのCC(カーボンコピー)欄に記載し、コピーを送るようにルール化しておきます。新人は独り立ちするまで全てのメールをCCで送るようにします。CCで送信すると取引先にも別の関係者に送っていることが分かります。なかには宛名の下に(CC: 水谷課長)と記載している例もありますが、記載しても記載しなくても関係者に送っていることが分かりますので、どちらでもかまいません。ただしCCで送る相手は多くても2名程度。CCに課長や部長のアドレスがずらっと並んでいると官僚的組織の会社で意思疎通が大変そうだなと取引先が感じてしまいます。関与する関係者が多い場合は、メーリングリストの立ち上げをおすすめします。
CCで送ると関係者で情報共有できる反面、メール総数を増やす要因になっています。重要でないメールでも取引先に送るメールはとりあえず上司にCCで送っている場合があり、送られてくる上司は見るだけでも大変。CCで送るのは報告が必要な重要メールだけに絞った方がよいでしょう。ただ絞ると上司は経緯を把握できませんので、今までの流れは口頭や別メールで報告するよう課内でルール化しておきます。
CCではなくBCC(ブラインド・カーボンコピー)欄に上司のアドレスを設定するとメールを送った取引先には分かりませんが、ビジネスの世界ですのでホウレンソウ(報告・連絡・相談)は当たり前。CCでアドレスを明示しておいた方がよいでしょう。
取引先からCCがついたメールが届いた時、よほど重要な案件でない限りは「全員に返信」ではなく個別に返信でかまいません。CCをつけるのは相手の社内事情ですので、送られた側が推し量る必要はありません。ただプロジェクト関係者がCCに入っている場合は情報共有の意味から全員に返信した方がよいでしょう。情報共有が継続的に必要なら、メールではなくメーリングリストを作ることを検討します。