取材協力・監修:言語聴覚士・松下淳子さん。秋田県の療育センターで子どものことばの発達教育に携わった後、青年海外協力隊員としてメキシコで2年間活動。当時、子どものことばの発達のサポート体制が整っていなかったメキシコで、専門機関の立ち上げに携わる。第3子の出産・育児休業をへて、2013年秋から、函館市の老人保健施設で言語聴覚士として復職予定。
子どもの発達をサポートしてくれる療育センターとは
子どもの心の発達やコミュニケーション能力に遅れや偏りが見られたり、その可能性がある場合に、その子と周りの人たちのコミュニケーションを取りやすくするという視点で、ことばの育ちをサポートします。1歳半~満2歳までに受ける1歳半健診での段階で、子どものことばの遅れに確定的な診断を下すことは難しい場合もありますが、2歳を過ぎても「ことばが出ない」「ことばが増えない」、3~4歳になっても「発音がはっきりしない」などの状況は、親や周りの人とのコミュニケーションに影響が出て、子ども自身が気づかないうちにストレスを感じていることもあります。
1歳半健診でことばの遅れの可能性を指摘されたケースで、実際に通い始める時期については、早くて2歳前後。3歳前後からが多いそうです。
療育センターで相談業務や発達指導に当たる専門家
1人1人の子について、ことばの遅れのみではなく、身体・運動面の発達、対人的コミュニケーション能力の発達について、次のような専門家たちが総合的に判断し、個別の支援プログラムを立て、連携してサポートしていきます。- 医師
- 看護師
- 臨床心理士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 保育士
- 社会福祉士
子どものことばの発達をどうやって引き出していくか
では具体的に、ことばが出る前や出始めには、どんな働きかけで子どものことばを引き出していくのでしょうか? ごく一例をご紹介します。■ 周囲の人・もの・音への関心を育て、ことばの存在に気付かせる
布を使って「いないいないばあ」。大喜びで何度もせがみます。
- 声をかけながらのふれ合い遊び、身体を使った遊びで、楽しいという気持ちや周囲への関心を引き出す
- 手遊びなどで、“まね”をする経験を多く持つ
- ボールの転がし合いなど、“やりとり”をする遊び
- “始めと終わり”を知らせる遊びを取り入れる(ミニカーを傾斜で滑らせるとき、「スタート」「ゴール」を知らせる、始めと終わりに声をかけて一定時間ポーズを取る遊びなど)
- 子どもが理解しやすい表現、タイミングでの声がけ(「はしっちゃ ダメ」→「すわりなさい、すわって」など)
- 写真や絵を使い、「りんご」(名詞)→「あかい りんご」(形容詞+名詞)→「あかい りんご たべる」(形容詞+名詞+動詞)というように、ことばを広げていく
想像してやりとりを楽しむままごと遊び
- ままごとなどのごっこ遊び
- 決まった場所におもちゃを片付ける、決まったごみ箱にごみを捨てる、脱いだ衣類を洗濯かごに入れるなど、生活上の習慣やルールとことばを結び付ける
■ ことばが引き出される場面を増やす
- あまり先回りしてお世話をせずに、子どもから「ちょうだい」「やって」などの要求を出す場面を作る
- 楽しい遊びを繰り返すことで、「もっとやりたい」という気持ちを引き出し、道具やおもちゃを持ってくるなどの表現を促す
子どものことばの遅れを指摘されたお母さん、お父さんへ
最後に、言語聴覚士・松下淳子さんからのメッセージです。・「ことばだけでなく、全体を見てあげましょう!」
ことばはゆっくりだけれど、お絵かきが得意、運動が得意、音楽が好きなど、その子が持っている力に目を向けて、伸ばしていきましょう。
・「親以外の人のサポートをうまく借りて、子どもの成長を見守っていきましょう!」
お母さんだけで、夫婦だけで悩まず、地域の人、子育て支援の場、専門家など、色々な人の目・視点で、子どもの育ちを見守っていきましょう。
・「子どもが属する社会で楽しく居心地良く暮らしていくために、専門家の知恵を借りましょう!」
ことばがけや生活習慣のちょっとしたコツや工夫で、ことばでのやり取りが不十分な子どもとのコミュニケーションがぐんと楽になり、親子で楽しくなれる場合も多いものです。そのために、ぜひ専門家を活用してください。
【参考文献】
『はじめてみよう ことばの療育 発達障がいと子育てを考える本(2)』(佐竹恒夫・東川健監修、ミネルヴァ書房)
『うちの子、言葉が遅いかな? どんどん言葉が増えていく遊び方』(金子保著、メタモル出版)
『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 話す前から一・二語文まで』(湯汲英史編著、明石書店)
『<S-S法>による ことばの遅れとコミュニケーション支援』(倉井成子編、矢口養護学校小学部著、明治図書)
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