1歳半健診で言葉が遅いと指摘されたら、どうすべき?

1歳半健診時でのことばの出方や反応は、個人差が非常に大きいものです。

1歳半健診時でのことばの出方や反応は、個人差が非常に大きいものです。

生後1歳4ヶ月になっても喋らない……そうなると生後1歳6ヵ月から2歳になるまでに受ける「1歳半健診」で、言葉の遅れを指摘されるケースがあります。

乳児期の健診では、体重の増え方や首すわり、寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ちや伝い歩きなど、運動面の発達のチェックが中心ですが、1歳半健診を受けるころには、多くの子がひとり歩きを始めていることもあり、言葉の出具合や理解力など、情緒面の発達に問題がないかが、親の方も大きな関心・気がかりとなってくるものです。そこで健診で引っかかると、親は多少なりとも動揺や不安を感じます。

私自身も我が子の健診で、そういった状況を一度や二度ならず経験しました。ことばの遅れの検査について、「どういった目的でするのか」「どのような点で“要経過観察”“専門機関の受診をすすめる”となるのか」「親としてどのようにとらえるべきか」などを、子どものコミュニケーション能力やことばの発達をサポートする療育センターでの勤務経験がある、言語聴覚士の方に取材をし、まとめました。

※ 取材協力・監修:言語聴覚士・松下淳子さん
秋田県の療育センターで子どものことばの発達教育に携わった後、青年海外協力隊員としてメキシコで2年間活動。当時、子どものことばの発達のサポート体制が整っていなかったメキシコで、専門機関の立ち上げに携わる。第3子の出産・育児休業をへて、2013年秋から、函館市の老人保健施設で、言語聴覚士として復職予定。

言葉はこんな過程を経て育っていく

1~2歳の時期の言葉の発達には、大きな個人差があります。それを踏まえたうえで、一般的にどのような過程をへて言葉が出てくるかには、次のような流れがあります。
ことばが育つ過程をまとめた表

ことばが育つ過程(取材をもとに、千葉作成)

言葉が出てくる仕組みは、よく、コップに水が溜まり、あふれ出す様子に例えられます。「言葉として外には現れていないけれど理解している言葉」がコップいっぱいにたまると、「話し言葉」としてあふれ出てきます。
ことばが出てくる仕組みのイメージ

ことばが出てくる仕組みは、コップに水が溜まり、あふれ出す様子に例えることができます。

特に単語獲得期、幼児期前期には、「言葉がなかなか出てこない」「単語が増えない」ということに目が行きがちですが、コップの形や、言葉がたまるスピードには、それぞれの子どもの個性があるのです。


1歳半頃の言葉の遅れの背景

1. 生理的範囲の遅れのケース
たとえば早産、未熟児で生まれた等の経緯があり、発達を修正月齢で考える必要があるケース(現在ちょうど1歳になったけれど、2ヵ月早産で生まれたので、予定日から考えると生後10ヵ月に当たるなど)。

2. 環境が多少なりとも影響しているケース
自分の中にためる単語の数、ためるスピード、それらが意味のある言葉として文としてつながっていく時期には個人差がとても大きいが、たまたまその子に適した刺激が少ない状況で、言葉の出方に影響が出ている場合など。

3. 言葉だけが遅いケース
聴力、理解力、行動にも問題が見られないが、3歳過ぎ~5歳近くなってしゃべり始めるなど、言葉だけが遅い。周りの子どもたちの多くがおしゃべり上手になっていく中、コミュニケーションにストレスを感じてしまう場合も。

4. 発達障害と診断されるケース
発達障害者支援法における「発達障害」の定義


1歳半健診での言葉の発達のチェックポイント

上記の流れの中で、1歳半健診では以下の項目が重要なチェックポイントになります。
  • 周囲の人とコミュニケーションが取れるか(視線が合うか、声がけに反応するか、「要求」以外に「共感」、「応答」する姿が見られるか)
  • 聴力に問題がないか
  • 身体全体の成長発達の遅れが、ことばの遅れとして出てきていないか
  • 発語能力の遅れがないか(呼吸の調節が適切か、「アーウー」「ぱっぱっ」などの喃語を発しているか、色々な音が作れているか)
  • ことばがなかなか出てこないことや、日々の親子のコミュニケーションに関して、親が何らかの不安を感じていないか
1歳半健診は、母子保健法に定められた乳幼児健康診査の1つ。各市町村が実施し、基本的にすべての対象児が受けるシステムになっており、身体の発育状況、栄養状態、病気・障害やその可能性があるかどうかを診ます。特に重視されるのは、周囲とコミュニケーションが取れているかどうかです。

具体的には、次のような項目を設け、問診や、対面の声がけに対する反応でチェックしていきます。
  • 身の回りの言葉がどのくらい理解できるか?
  • 身振りや音声のまねが見られるか?
  • 泣くときや怒ったとき以外の穏やかな場面でも、発声が見られるか?
  • 身振り手振りや発声など、複数のコミュニケーション手段を使ってやりとりしているか?
など。

ただ、言葉の出方がゆっくりで、健診時のチェックで期待通りの反応が見られなくても、問診によって、日常生活の中でことば以外の手段(身振り手振りや表情など)でコミュニケーションが取れていたり、自分の気持ちを表現できていたり、「ごみ、ポイして」などの簡単なことばの意味が理解できていたりする様子が確認できれば、「様子を見ましょう」となる場合がほとんどです。2歳を過ぎてからの再チェックの場を設定されるケースもあれば、そのまま3歳児健診を迎える場合もあります。

2歳を過ぎても単語が増えず、単語は出てきてもなかなか2語文に発展しないという状況が続くと、専門機関に相談をした方がよいのかどうかという親の心配が大きくなるようです。

1歳半健診で言葉の遅れで経過観察や専門機関の受診を勧められた場合

ここで確認したいのは、言葉の発達に非常に個人差が大きい1~2歳の時期、そのお子さんの「ゆっくり度」が、様子を見て問題がない範囲なのか、その子の情緒面を様々な角度から見て適切な刺激が得られる場を用意した方がよいのかどうかの判断は、専門家以外には難しいということ。知人・友人のお母さんの体験談やアドバイスももちろん大きな参考にはなりますが、あくまでその方のお子さんのケースと体験に基づいたものです。

「毎日一緒に暮らしているお母さんやお父さんが不安を感じる場合は、まずは気軽に専門機関に相談してみましょう」と、松下さんは以下の理由から勧めます。

ことばの専門家は
「ことばだけでなくその子の全体を見る視点を提示します」
(日常生活の中で、何が得意で何が苦手かの両方に目を向けて、それぞれを伸ばしていく視点)
「“ことばの訓練”に限定するのではなく、コミュニケーションをスムーズにすることで、その子が感情表現をしやすくなり、親子双方のストレスを軽くするお手伝いをします」

療育機関に通ったり相談したりして、日常生活の中でできる声がけや生活習慣の工夫のアドバイスをもらうことなどにより、「それぞれの子どもたちの個性を伸ばし、居心地良く生活し、親子とも楽しくなれる」ことが、ことばの遅れをサポートする目的であると、松下さんは話します。心配事を親とその周辺の人たちだけで抱え込むのではなく、一歩引いて専門的立場から見守ってくれる存在があることも、心強いことではないでしょうか。

「まだ1歳なのに遅れを指摘された」ということは、「早い段階で、その子の個性を色々な方面から眺めてみるきっかけになった」と捉えることもできます。

療育センターなどへの相談や定期的な通所で得られるアドバイスや訓練について、詳しい内容を療育センターで受けられる子どものことばの発達支援」にまとめましたので、併せてご覧ください。

【参考文献】
『はじめてみよう ことばの療育 発達障がいと子育てを考える本(2)』(佐竹恒夫・東川健監修、ミネルヴァ書房、2010年)
『うちの子、言葉が遅いかな? どんどん言葉が増えていく遊び方』(金子保著、メタモル出版、2012年)
『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 話す前から一・二語文まで』(湯汲英史編著、明石書店、2010年)
『<S-S法>による ことばの遅れとコミュニケーション支援』(倉井成子編、矢口養護学校小学部著、明治図書、2006年)

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。