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勅使川原三郎が荻窪にアートスペースをオープン!(3ページ目)

日本ダンス界を代表する振付家・ダンサーであり、世界を舞台に活躍する勅使川原三郎さん。その30年にわたる活動の結晶として、この夏荻窪に複合アートスペース『カラス アパラタス』をオープン! スペースのコンセプトや想い、今後の展開について、勅使川原さんにお話をお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド



Q:勅使川原さんの提唱するメソッド、土台づくりとは?

勅使川原>呼吸でゆっくり伸びて、緩めて、縮んで、ジャンプをして、自分の呼吸と動きを合わせる。そして、自分自身が調和を見い出す。動きをマネして形で繰り返すのではなく、自分自身と動きと音楽の三つが一体となる。動きを意識化するということです。演奏家もそうですよね。例えばヴァイオリニストは弦をおさえる指の位置により音が違ってくる訳だけど、無限にある音の中から、的確にその音調を調和させなければいけない。

身体も音楽家と同じように、ぴしっと調整して、吟味して、この呼吸だったらこういう動きになるというように、綿密に練習することが大切になる。そういう意味では、僕は音楽をとても大事にしているし、演奏家をとても尊敬しています。

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『リユニオン~ゴルトベルク変奏曲 』フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)との共演 ph Toshiaki Yamaguchi


Q:確かに、勅使川原さんの作品には、非常に音楽的なものを感じます。

勅使川原>記号的な動き、形を覚えるだけでは、本当に生き生きしたものは出てきません。音楽家の人たちには、的確に音を聴き分ける高い技術がありますよね。けれどそこに内面的なものがなければ、無味乾燥な音しか聴こえてこない。ダンスも全く同じで、まだまだ技術を磨くべきだし、もっともっと豊かな気持ち、さまざまな人間の気持ちを表現できるようにならなければと思う。初心者が時間がかかるのはもちろん、僕自身もまだこれから沢山時間がかかると思っています。

こういうスペースがあって、日々のダンスが公開できるということは、プロセスをみなさんと共有できることでもある。それが、今までのダンス界にはなかった部分じゃないでしょうか。結果・成果を観てくださいというやり方はあるし、そのときはちょっと頑張っていい部分を観てもらおうとしますよね(笑)。といっても僕は決して下手な部分を観てもらいたい訳ではなく、生き生きした日々の変化、挑戦している成果を共有していきたいということ。劇場だと、プロセスはなかなかオープンにしにくいもの。だからこそこういう空間が必要であって、プロセスをみなさんと共有する時間をつくれたらと思っています。

また、アパラタスではダンスだけでなく、写真家や音楽家など、さまざまな方々と出逢える場所にもなっています。今の若い人たち、ダンスにあまり興味を持ってない人たちにも、面白い出逢いがつくれるのではないでしょうか。常に、外に開かれている場所でありたい。今後はインターネットでの映像配信も考えています。例えば対談やトークイベントも開催していきますが、その模様をオンデマンドで好きなときに見れるようにしたり。いろんな興味を持ってくださる方と一緒につくり上げることで、ここの意味もより明確になってくるのではと考えています。

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勅使川原三郎監督による映像作品『A Tale Of』  ph Ravi Deepres Wanselius



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