Q:2013年8月、荻窪にオープンした『カラス アパラタス』。3フロアからなる空間には、スタジオにギャラリースペースまであり、勅使川原さんのこだわりが伝わってくるようです。

勅使川原>僕はもともと渋谷の出身ですが、昔から中央線が好きで、若い頃は沿線に転々と住んでいました(笑)。昔から中央線沿線って舞台関係、アート関係の人が集まることが多いし、そういう意味では便利ですよね。ここは偶然見つけた場所ですが、以前は劇団が使っていたそうです。ただ僕は劇場とは呼ばずに、ギャラリーやスタジオスペースと言っています。

内装は全部自分たちでつくりました。階段からトイレの中まで、全館・全フロア、全ての床にダンスマットを敷いています。というのも、僕らはダンスマットというものに親しみがあって……。ダンスをする場所というだけでなく、自分たちが日夜いる場所、生活する場所でもある。稽古場としても全館使えて、ここからダンスが生まれてくる。何より、ダンスマットがあると心地いい、単純に嬉しいんです(笑)。

改装は1ヶ月くらいかけて、カラスのメンバー全員でやりました。自分たちでマットを切ったり、壁を塗ったり。みんなで協力することで意識も高まるし、団結も強くなる。自分たちの手でつくるというのは、やはりいろいろな意味で非常に重要ですよね。

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アパラタス館内 壁面には過去の公演ポスターなどが展示されている  ph Ryunosuke Kazama


Q:さらに、地下にはホールまで完備され、公演やイベントも開催することができる。ダンスに携わる人間にとっては、まさに夢のような空間ではないでしょうか。

勅使川原>そうですね。だけど、まだまだ設備は整ってないし、制作費も不十分。例えば照明や音響ビジュアルといった機材も足りてないけれど、今は基礎的な部分で精一杯というのが実情です。そうした不足部分に関しては、クラウド・ファンディングという形で公共に公開することでみなさんに支援を募りたいと思っています。

『アパラタス』とは“装置”という意味なんですが、アパラタスの装置・空間をみんなでつくっていこうと考えています。ここは勅使川原三郎が中心となったプライベートな場所ではあるけれど、プライベートは決して隠すものではないと考えていて。映画館でも劇場でもなく、稽古場スペースが社会に向かって広がっている場所。個的な場所で、アーティストがいろいろな人に向け広がっていく、付き合いを広げていくというのは大切なのではと……。

いくらダンスが好きでも、ダンスをやらない人にとっては、どうしたら関われるかわからないと思う。どのような関わり方があるかというのは、わかりにくい部分でもありますよね。そこに対して、こちらから“こんな方法があります”と提案していきたい。ワークショップはもちろん、美術展や写真展、トーク、対談の開催、過去の公演映像なども、これからどんどん公開していきます。全館で、舞台公演だけではないダンスとの関わり方・表現とみなさんが出逢う場をつくりたいと考えています。

また、日夜自分たちでパフォーマンスをして、みなさんと出逢う場を設けます。秋には東京芸術劇場で公演をしますが、そういう大きな空間での公演も大事にしたいし、ここでやる手づくりの公演も大事にしたい。双方でいい関係をつくれたらと思っています。

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アパラタス 階段ギャラリー       ph Ryunosuke Kazama


Q:クラウド・ファンディングに参加することで、ダンス活動、アート活動に携わることができる。アートの新しい楽しみ方と言えそうです。

勅使川原>ぜひそういう風にしていきたいし、参加していただきたいと思っています。劇場主体ではなく、アートとの関わりを自分たちでコントロールできる、今までとは違った形のアートとの付き合い方。それは、小空間だからこそできることだと思っていて……。

協賛してくださる方には、チケットを差し上げるなど、さまざまな特典を用意しています。支援は500円~で、額が上がるに連れいろいろな参加の仕方があり、それもまた面白いのではと考えています。

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3D映像インスタレーション『Double District 』 ph Volker Kuchelmeister