映画『風立ちぬ』&物作り映画傑作6選

いちばん大人なジブリ映画『風立ちぬ』

まずは宮崎駿監督作『風立ちぬ』からご紹介～！

『風立ちぬ』（2013年度作品）

ジブリの最新作『風立ちぬ』は、これまでのジブリ映画の中でも大人向きに位置する作品です。実在した堀越二郎の零戦設計に懸けた情熱と愛した妻・菜穂子との日々が描かれています。これまでの『となりのトトロ』『崖の上のポニョ』のようなファミリーピクチャーとは一線を画し、堀越二郎と菜穂子のラブシーンも描かれていて驚き！とはいえ、宮崎駿監督は、クリエイターとして設計士である主人公にかなり自己を投影しているようです。

飛行機に魅せられた主人公は零戦の設計者になります。彼は戦争で多くの人が亡くなっていくことに心痛めますが、それでも飛行機の美しさや機能性にどんどん魅せられ、より素晴らしい飛行機をと夢中になっていきます。平和を愛することと零戦を設計することには矛盾があり、そこが主人公の葛藤となっていきますが、そこがとても人間臭くていい！ 宮崎監督自身も飛行機に魅せられているようなので、堀越二郎の気持ちが痛いほどわかるのでしょう。それはクリエイターならではの葛藤かもしれません。

また主人公と菜穂子が一瞬たりとも離れていたくないといった感じの若い愛は、ストレートに純愛を描いています。彼は多忙を極め、菜穂子の病を気にしつつも、普段の生活はマイペースです。でもそんな彼を近くで見るだけでも幸福そうな菜穂子はとてもかわいらしい。イジワルな目で見ると「男性ってこういう女性のこと好きだよね～。現実にはあまりいないけど」と思ったりしますが、宮崎監督がそれだけロマンチストなのでしょう。菜穂子のエピソードは堀辰雄の「風立ちぬ」の要素が入っているようです。

矛盾を抱えながらも自分の道を歩む。妥協せずに生きる。主人公を通して、そんな勇気がもらえる映画です。

『風立ちぬ』
2013年7月13日公開
監督：宮崎駿
声の出演：庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
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