装いのマナー、上演中のマナー、お弁当のマナーなど、気になるマナーについてのお話をお伺いした「大向こうから学ぶ 一歩先ゆく歌舞伎鑑賞 後編」は →こちら
大向こうとは
大向こう堀越氏
諏内:
堀越さんは、歌舞伎の演技途中に客席から掛け声をお掛けになる『大向こう(おおむこう)』をなさっていますが、堀越さんがお考えになる大向こうの役割とは?
堀越氏:
『客席の期待や感動を、声にして役者さんに伝える役割』と考えています。芝居の一部であり、いても特に気づかれないけれども、いないと気づく……。いわゆるお寿司のワサビのような存在かと思っています。
諏内:
確かに、大向こうさんがいらっしゃることでお芝居がより締まる、なくてはならない存在なのでしょうね。
一歩先ゆく愉しみ方
歌舞伎の愉しみ方とは?
諏内:
ここからは、大向こう堀越さん視点での歌舞伎の愉しみ方を伝授いただければと思います。特に初心者の方が、歌舞伎をご覧になる前になさっておきたいこととは?
堀越氏:
松竹さんのサイト「歌舞伎美人」(かぶきびと)をご覧になっておくといいかと思います。「演目と配役」「みどころ」というところがあるので、そちらに目を通してみてください。
諏内:
やはり、ある程度予習をしておくのは必要ですね。その他には?
堀越氏:
歌舞伎座に到着してから、「筋書き」、いわゆるプログラムを買ってあらすじに目を通しておくのもおすすめです。ただし、芝居が始まってからプログラムを開いて確認するのはいただけません。必ず始まる前までにご覧になってください。
諏内:
お芝居が始まったら目を逸らさないのが礼儀ですものね。
堀越氏:
それと、一度は花道近くの席でご覧になるのもおすすめです。役者さんの息づかいや、衣裳の衣擦れの音が聞こえたり、また、着物についたお香の香りが感じられたり、脚に塗られたおしろいの粉がフワッと舞うのが見えたり……。とグッと愉しめるかと思います。
諏内:
これぞ観劇の醍醐味ですね。
堀越氏:
また、その日の演目の主題に関連する装いをなさるのも素敵です。たとえば、「道成寺」なら桜、といったように、主題の植物や色などが少し入っていると格好いい。
諏内:
その、「少し」というのが素敵なのですよね。お扇子やハンカチなどの小物使いでもお洒落ですね。
堀越氏:
そう、多すぎると粋じゃない。
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