単なる地すべりは火災保険の補償対象外
おもに豪雨などの影響で発生する「がけ崩れ」や「土砂崩れ」
それぞれの火災保険を取扱う損保各社で表現は異なりますが、豪雨や融雪洪水などの影響ではない、単なる地すべりによる被害には保険金は支払われません。また、”不足かつ突発的な事故”(破損・汚損)を補償する火災保険も増えていますが、その場合でも、「土地の沈下・隆起・移動等に起因する損害」は、約款上の”保険金を支払わない場合”(免責事由)とされていることがほとんどです。
一方で、山形県で発生した融雪等が原因で起きた地すべりは、水災として、契約により火災保険の補償対象になります。
地すべりに似た災害に前述した土砂崩れ、がけ崩れ、山崩れなどがありますが、こちらについては火災保険でカバー可能です。これらはおもに豪雨や洪水などが原因で起きる災害ですから、それで被った住宅や家財に対する損害については、水災補償の契約があれば、火災保険による補償を受けることができます。
地震が原因で地すべりが起きることもありますが、この場合は地震保険の契約をしていれば住宅や家財の損害がカバーされます。住宅全壊でも受け取れる最大の地震保険金は建物評価額の50%までとなりますが、それでも国や自治体による支援が限られている現状では、優先度の高い補償といえます。
住んでいる場所・住みたい場所の自然災害リスクの確認を
以上をまとめますと、・地すべりは特定の地質を持つところで起きやすく、また地下水の影響を受けて起きることの多い災害である
・降雨で地下水が増える、あるいは地震によるもののほか、トンネル掘削といった人為的な要因で発生することもある
・崩落のスピードが遅いため、命にかかわる被害は生じにくいが、特定の場所では住宅が地すべり被害を受けることは十分にあり得る
・豪雨や融雪洪水が原因の土砂崩れ、がけ崩れや地すべり、地震が原因で起きた地すべりなどによる被害は火災保険・地震保険の対象
・豪雨や融雪洪水などの影響ではなく、地質が原因で起きた一般的な地すべりで住宅が全壊、あるいは家財を失った場合、火災保険では補償の対象外
このように、地すべり被害に関しては、火災保険や地震保険による備えに限界があります。ですから、被害を受けないためには、地すべりに限らず自分の住まい地、あるいは住もうと思っているところが、どのような自然災害リスクを持っているのか、まず知ることが大切です。
住まい地の地すべりについては、これまで地すべりが起こった場所や範囲・規模・変動状況を把握できるJ-SHIS(地震ハザードステーション)の「地すべり地形分布図」や、発生リスクを確認できる国土交通省の「ハザードマップ」などを参考にするとよいでしょう。
【関連リンク】
山形県の融雪等に伴う地すべりにかかる救助法の適用について(厚生労働省)
山形県の融雪等に伴う地すべりにかかる災害に対する金融上の措置について(東北財務局)
融雪等に伴う地すべりにより被害を受けられた皆様へ(日本損害保険協会)
独)防災科学技術研究所「自然災害情報室」
J-SHIS(地震ハザードステーション)
「そもそも火災保険とは?」勘違いランキング
火災保険の補償内容 勘違いランキング
火災保険の必要性2 自然災害に国の補償なし
火災保険の水害(水災)とは?
出る? 出ない? 地震保険金
国土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~