ですので、本記事では、よいコンセプトをみつけるために使えるフレームワークをひとつ、ご紹介していきます。
デビッド・アーカーのベネフィット3分類
デビッド・アーカーという人をご存じでしょうか? カリフォルニア大学で名誉教授を務める経営学者で、彼のことを「ブランドの神様」と呼ぶ人もいるほどの人物です。彼はベネフィットには3つの種類があると述べました。・機能的ベネフィット
・情緒的ベネフィット
・自己表現ベネフィット
それぞれの意味を図解したのが下図です。
アーカーのベネフィット分類
そして、アーカーは「機能的なベネフィットではなく、情緒的ベネフィット・自己表現ベネフィットに目を向けよ」と言っています。
これは、私たちは目に見える機能的ベネフィットに意識を向けがちだが、それだけが価値ではないということ。特に売り手の立場に立ったとき、「便利です」とか「安いです」とか「早いです」とか、実利に目を向けてアピールしてしまいます。それも大切な要素ではありますが、そこで競合に差をつけるのは難しい。
だから、機能的ベネフィットにだけフォーカスしたプレゼンは、コンセプトが際立ちにくいわけです。
アーカーの言葉
下記のサイトに、アーカーの言葉が詳しく述べられています。DENTSU Brand Creation Center
重要な部分だけ、引用しましょう。
4.機能的なベネフィットを超えるものにする
現在、製品の特長や機能的なベネフィットに焦点を当てようとする傾向がある。(中略)機能的なベネフィットではなく、情緒的なベネフィットや自己表現ベネフィットに目を向けてみよう。
顧客はVolvoに乗って安心感を得るし、BMWに乗れば気持ちが高揚する。コカ・コーラが手元にあれば元気が出るし、Hallmarkのカードが届けば温かな気持ちになる。Zaraで服を買えばクールな気分になるし、Lexusを運転すれば成功者の仲間入りだ。Appleを使っている自分はクリエイティブで、Quaker Oatsのホットシリアルを作る私は優しい母親。Kmartで買い物をしたら質素で見栄を張らない人物だし、REIのキャンプ用品を持っていたら冒険家で活動的な人物になれる。
機能的ベネフィットに捉われないプレゼンをしよう
本記事の提案は、アーカーの3分類を知ることで、機能的ベネフィットに捉われないプレゼンをしようということです。表現を変えれば、プレゼンのコンセプトが、受け手にとっての最大価値になるように再解釈をしようと。アーカーの言うとおり、機能面だけを語ったとしても、それは受け手にとっての価値の一部でしかありません。高級車を購入する人は、ただ速い車・揺れない車が欲しいわけではありませんよね。そのエンジン音を聞いたときの興奮であったり、その車を所有すること自体のステータスだったりが価値なのですから。
もし、カーディーラーの販売員が、機能面だけしかアピールできなかったならば、販売成績は決して高くならないことは、容易に想像つくのでは?
一言でまとめるならば、「プレゼンでは、機能だけを売るな。感情と経験とセルフイメージを売れ」ということ。それが受け手にとっての価値を最大化し、メッセージの差別化もしてくれます。
多くのプレゼンターは機能的なベネフィットを語ることを、あの手この手で努力する。その努力の一端を、そもそも別の切り口からベネフィットを示すために注いでみましょう。