手作りの薪窯で故郷のパンを焼く
千葉県八千代市に薪窯を設えた小屋で自家製酵母のパンを焼くフランス人がいると聞いて、訪れました。
「ある日、地元民しか通らない裏道を通ったら、いつもの牛舎がなくなっていて、畑の向こうにあの不思議な看板が見えたので、のぞいてみたのです。それから時々パンを買うようになりました」。今回の取材の機会を作ってくれた人はThierry Siaud(ティエリ シオ)さんとの出会いをそう語ります。
畑の向こうに看板が
看板にはwww.furanupan.jpと、お店のURLも書いてあります。本来ならばfrance pain(フランスパン)では? いや、そもそもフランス人はフランスパンとは言わないか。などと想いを巡らしましたが、“furansupan”とローマ字綴りなのは、日本人にわかりやすいようにとのやさしい心遣いでした。
ティエリさん
ティエリさんはフランスのローヌ=アルプ地方、イゼール県のレドゥザルプという村の出身で、お父さんは料理人、近くにはパン屋さんもあり、おいしいものを食べて育ったといいます。兄弟もほとんどが食の仕事についているということもあって、日本で生活を始めたティエリさんが、「おいしいものはたくさんあるけれど、昔から食べ慣れたパンがなかったので、故郷のパンを作りたかった」と自らパンを焼き始めたことは、何の不思議もないのです。
裏庭のパン焼き小屋
すごいのは、パンを焼く窯を作ってしまったところです。故郷のようなパンを焼くにあたって、最初にティエリさんは自らの手で約1年かけて自分でローマ式の窯を作るところから始めました。ローマ式の窯は地元の吉橋の藁と高本の土粘土も使われています。縄文時代に土器を作るために使われたのと同じ土粘土だそうです。そして1年ほど前から、ティエリさんはこの、自宅の裏庭の小屋で焼いたパンの販売を始めました。
ここでパンを焼く