フィンランド/ヘルシンキのグルメ・レストラン

旧カレリアの面影を残す食堂、コンスタン・モョルャ

東フィンランド一帯のカレリア地方は、歴史的な伝承や文化の発祥地とされ、フィンランドの精神的故郷ともいわれるエリア。コンスタン・モョルャには、その中心都市であったヴィープリ(現在はロシア領)の漁港でかつて使われていた桟橋が移築され、インテリアもすべて往時に現役だった漁業道具や日用品ばかり。フィンランド人誰もが強くノスタルジーを覚える空間で、家庭的な郷土料理のビュッフェを堪能できます。

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド

古き良き東フィンランドの味と文化に思いを馳せて
Konstan Möljä

内観

その昔、カレリア地方の島の桟橋として本当に使われていた足場をそのままレストランに持ち込んで内装にしてしまったという、見せかけでない文化の伝承にこだわるお店

家族経営のビュッフェ式フィンランド料理食堂、コンスタン・モョルャ(Konstan Möljä)がヒエタラハティ地区にオープンしたのは、1981年のこと。現在は2代目のご夫妻が、仲睦まじく調理から接客までを担っています。

壁画

団体用部屋には、創業者のセッポ氏自らが描いたという古き良きヴィープリの街の絵が残る

大衆食堂のようなカジュアルな雰囲気を持つレストランの創業者は、カレリア(Karjala/カルャラ)地方のヴィープリ出身の映画監督、セッポ・フーノネン(Seppo Huunonen)。東フィンランド一帯のカレリア地方は、歴史的な伝承や文化が受け継がれてきたフィンランドの精神的故郷ともいわれるエリアです。

彼が生まれたヴィープリ(Viipuri)という街は、かつてはフィンランド第2の都市として栄えた、カレリア地方を代表する港町でした。ところが20世紀に入ると、ヴィープリの街は割譲を要求する旧ソ連との間で幾度も戦禍をこうむり、第2時世界大戦後ついにフィンランドは譲渡を許してしまいました。今でも、ヴィープリはロシア領なので、滞在にはヴィザが必要になります。

店内2

店内には、ヴィープリから持ち込んださまざまな日用品や写真が飾られ、往時の記憶をそこに留めている

こうした歴史的経緯から、ヴィープリの街は今日でもフィンランド人にとって、とりわけ古き良きカレリア文化へのノスタルジーにあふれた場所として記憶に刻まれ続けている特別な地です。店名のKonstaはフーノネンのおじいさんの名前で、möljäというのはこの地域の海の男達の方言で「桟橋」の意味があったそう。というのも、このレストランの入口入ってすぐのウッドデッキのような通路は、なんとかつて本当にヴィープリのウーラス島内で使われていた桟橋を移築してきたものなのです!
デッキに限らず、店内のあちこちにインテリアとして目につく古びた漁業道具や日用品、壁にかかる織物などはすべて、ヴィープリの海辺でかつて現役だったものばかり。店内の何もかもが、観光者を喜ばせるレプリカではなく、往時の記憶を留める「証拠品」であることが、ご主人の何よりの誇りです。

奥さんの郷土の味を、ビュッフェ形式で

料理

ビュッフェ形式をとる食卓には、どっしりとしたカレリア地方の郷土料理を中心に、奥さんの手料理が何品も並ぶ

コンスタン・モョルャの料理はビュッフェ形式。サーモンやトナカイを使ったフィンランドの伝統料理や、時間をかけて煮込んだりオーブンで焼き続けて素材にしっかりと味を染み渡らせるのが特徴の、カレリア地方の郷土料理が食卓に並びます。かつてはランチもやっていましたが、現在はディナーのみ。ビュッフェとは別オーダーが可能なアラカルトメニューも何品かあります。

料理を手がける奥さんは、かつて要人たちの料理を手がけていた経歴を持つシェフで、味は確か。また、ご夫妻の趣味のひとつがキノコ狩り。夏季休暇などには何週間も森に入り続け、そこでどっさりと収穫したキノコも、年間を通して料理に利用されるそうです。

ぜひ、フィンランド人がノスタルジーを覚える古き良きカレリア地方に思いを馳せながら、満腹になるまでおいしい手料理を堪能ください。

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外観

フィンランド国旗と大きなM字のロゴを目印に

Konstan Möljä(コンスタン・モョルャ)
住所:Hietalahdenkatu 14, 00180 Helsinki
TEL:+358 9 694 7504
アクセス:トラム6「Hietalahdenkatu」下車徒歩約2分
営業時間:火~金曜17:00~22:00、土曜16:00~23:00
定休日:日・月曜日、7月は夏季休暇、年末年始休暇あり
平均価格:ビュッフェ19ユーロ、アラカルトメニュー10ユーロ~
※大人数の場合予約が望ましい

※上記データは記事公開時点のものです。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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