ボーダーラインはどこ?
繁殖と譲渡、法律のボーダーラインは?
これを知るためには、まずは種苗法について知る必要があるのですが、ただでさえ法令文書はわかりにくいですし、種苗生産が生業でない限り読む気にはなれないものでしょう。
私も御多分にもれず……ですが、今回の事例に大きく関わる種苗法の「第四節(第十九条~)育成者権」と「第五節(第三十三条~)権利侵害」に注目してみると大体以下のようなことが書かれていました。
- 育成者権は品種登録により発生し、25年(別項に定めた木本性植物は30年)間有効(平成17年の種苗法改正前のものは20年/25年、平成10年以前15年/18年)
- 新品種の育成のため交配親に用いたり、登録品種の育成をする方法についての特許権を有する者、またその特許権の消滅したものについては育成者権の効力が及ばない
- 農業者等が最初に育成者権者等から正規に入手した登録品種の種苗から収穫物を得、さらに種苗として用いる場合、育成者権の効力は、そのさらに用いた種苗及びこれを用いて得た収穫物には及ばない
- 農林水産省令で定める「栄養繁殖(挿し木や接木で増える)植物」に属する品種の種苗を用いる場合は、無断で増殖すると違法になる
この植物は、挿し芽で増やしてもいい?
では「知人に無償であげる」は?というと、「利益を得るわけでなし、1~2本ならいいんじゃない?」とも思いますが、原則として登録品種を増殖する場合は育成者権者の許諾が必要であることから、こちらはNGに近いグレーゾーンということに。
個々のケースが権利侵害に当たるかどうかは、事例ごとに詳しく検証しなければなりませんが、無用なトラブルは避けたいものです。まずは何よりも、育成者を守るために種苗法という法律があるのだ、ということを知っておいていただいて、良識の範囲内で植物栽培を楽しみたいですね。
どれが登録品種なの?
種苗法の大切さはご理解いただけたかと思いますが、それではどうすれば種苗が登録品種であるかどうかわかるのでしょう?これを明確にすべく、日本の種苗関係6団体が協力して「登録品種(登録出願中)」を示す「PVP(Plant Variety Protection・植物品種保護)マーク」というものを作成、商標登録しています。ただしこのPVPマークは法規制によるものではないので、私も近隣でPVPマークがついているものにはまだお目にかかっていない……というのが現状です。
同様に注意したいマークとして、商標登録済であることを表す(R)マークがあります。種袋や苗についているラベル表記を注意して見てみましょう。たとえば画像の花苗ラベル、品種名や特徴はパッと目に入りますが、よーく見ると実に小さく(R)も印刷されていますね。
ラベル記載のマークに注意!
なお品種名から登録種苗であるかどうか確認するには、農林水産省品種登録ホームページの「品種登録データ検索」で検索することができますよ。
さて今回の事件簿、趣味のガーデニングで法律違反?!とは、ちょっと脅かしてしまったかもしれませんが、こういう法律もあるのだなぁということを頭の片隅に入れておいていただければと思います。
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