徹底した衛生管理で、清浄な空気に包まれる蔵内
蔵1階。蒸し米を造る甑と和釜。横では洗米作業が行われている。
石本酒造にうかがうとまずは社を囲む竹垣の美しさに息をのむ。新潟市都市景観賞を受賞しているこの竹垣、4月には青々した青竹に変わるのだとか。社屋は意外にもモダンな印象。エントランスには「如亭の木」と呼ばれまるでご神木のごとき巨大なタブノキが。「如亭」とは二代目の雅号。敷地内には如亭の碑もある。
四代目に
蔵内を案内していただいた。
小さく磨かれた酒米は、冷たい水で優しくなでるように洗われる。
蔵に入った瞬間、蔵人の「5秒前!」「はい、やめっ」の歯切れのいい声が響く。洗米中だ。
驚くほど丁寧にゆっくりと静かに行われる洗米。磨いた米が割れないようにだ。なにせ今洗っているのは大吟醸用の山田錦、30%精米。丹念に磨いて極小になった米は「限定吸水」を行わなければいけない。高精白の米は水を吸い過ぎると柔らかい蒸し米になってしまうので、水を吸い過ぎない絶妙のタイミングで水切りをする。ストップウォッチを使って秒単位での作業。蔵人全員の息が合わないといけないし、この時期の水はさぞ冷たいことだろう。
ここで気が付いたのが、蔵の中に入った瞬間、日本酒蔵でよくある麹のような、発酵臭のようなにおいが全くないことだった。むしろほんのりといい香り、香ばしくきれいな香りがする。
重要なのは「限定吸水」。磨かれた酒米は水を吸いやすいので繊細な管理が必要だ。
「
とにかく掃除はしっかりやります。とくに先々代は徹底して掃除に力を入れました。蔵人に掃除はしたかと聞くそばから、階段の裏を確かめる。そういった見えない場所に菌 がいるのだから、と言っていたそうです 。これは、手を抜かない妥協しないという酒造りの心構えだと理解しています。」 と石本社長。酒造りのない夏場は機械のメンテナンスと徹底した掃除が行われるとか。蔵は昭和60年ころから徐々に新しくし一昨年現在の形になった。隅々までが輝くばかりに清潔だ。
飲む方にとって、スペックはおいしさの後にくるもの
大吟醸用の酒母タンク。清々しい果物のような香りがわずかに香る部屋。
洗米が行われている横には山積みの米。使用するのは、兵庫の山田錦、新潟産の五百万石やこしいぶき、そのほか美山錦 などを主体とする。自家精米し、水分調整でビニールに入れたり入れなかったりする。細かい部分の管理が重要だ。
「いい酒、うまい酒を造るには最高の原料が必要不可欠です。米の品種の個性も重要ですが、飲む方にとってはスペックはおいしさの次・・・かもしれません」と社長。確かに飲み手にとって重要なのは酒の味。おいしく感じればどの品種でも実のところ関係ないと私は思う。
大吟醸用の蒸し米。温度調整、湿度調整が重要。出来上がる酒の味に響くのだ。
そして水。
「水は、敷地内100か所をボーリングし阿賀野川の伏流水を探しあてそれを使用しています。近年、井戸の水量が減ってきたことと、水脈の蒸留で薬品や灯油漏れなど起こると地下水の汚染が心配されます。地下水はイメージがいいのですがリスクが大きい。水道は安全であるし、自社でマクロ濾過を施している。水質は超軟水です 」
まさにこの水が寒梅らしさを醸し出してくれるのである。
静か、しかし熱い情熱で酒を生み出す蔵人は平均40歳代!
大吟醸の仕込み。蒸し米を流れ作業で運ぶ。酒造りは体力勝負だ。
従業員数は73名 。製造部には通年雇用の正社員が23名と季節従業員が14名。 20年クラスのキャリアを持つ人もいるが平均40歳代後半と若い。洗米のあとは仕込みの作業。今日は「留添え」。洗った米を流れ作業でタンクへ入れる。力仕事でもあり、ここでもチームワークが必要だ。
酵母は米に合ったものを厳選して 使用。温度管理ができるサーマルタンクを使用し冷房の部屋で育てる。あくまで低温管理。
普通酒や本醸造酒の蒸し米をだす連続式蒸米機
大きな発酵タンクでは今発酵真っ盛り。もちろんタンク内も11℃~13℃の低温発酵。タンクから嗅ぎ取れる香りは間違いなく淡麗。この時点でもそれがわかるのがさすが。絞ったばかりの酒をテイスティングさせていただいたが、ほんのりと泡を感じる清々しい味わい。
発酵タンク。ここですでに「淡麗」を感じさせるきれいで淡い香りが感じられる
もぎたての青リンゴのような清らかさと若さからくる苦みが印象的だったが、やはりこの時点でも淡麗を実感できる。ちなみに酒粕も人気商品。今年の酒造りは4月12日 まで行われる。