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繰り返されるエレベーターの死亡事故 その予防策は?(2ページ目)

繰り返される「シンドラーの悲劇」―― またしても同社製エレベーターで死亡事故が起きてしまいました。マンション生活においてエレベーターは日常生活の「足」です。マンション内での死亡事故はマンションの資産価値にも悪影響を及ぼします。決して繰り返されてはならないのです。そこで、事故を未然に防止するには一体どうすればいいのか、その対策を考えてみることにします。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


再発する「シンドラーの悲劇」  同社製エレベーターの国内シェアはわずか1%程度 

イメージ写真

現在、わが国には70万台近くのエレベーターが存在している

突然ですが、読者の皆さんは日本に何台のエレベーターがあるか、ご存じでしょうか。わが国には何と70万台近くのエレベーターが存在しており、そのうちの約8200台がシンドラー社製エレベーターだそうです。割合にすれば、わずか1%ちょっとというわけです。にもかかわらず、同社製エレベーターの死亡事故は後を絶ちません。もし、ご自宅マンションのエレベーターがシンドラー社製だったら、誰もが「乗りたくない」と思うはずです。繰り返される“シンドラーの悲劇”によって、多くの人が恐怖心を抱くようになりました。

今年10月末に起こった「アパホテル金沢駅前」の死亡事故は現在も調査中です。そのため、原因はよく分からないのですが、6年前に起きた「シティハイツ竹芝」の圧死事故は事故調査委員会によって「電磁ブレーキのブレーキコイルが異常を来たし、ブレーキが正常に機能しなくなったことが原因」と推定されています。

事故を起こしたエレベーターは「ロープ式」といって、「かご」と「釣り合いおもり」の重量バランスを利用して駆動させる方式になっていました。要は、電磁ブレーキの効きを強めたり弱めたりすることで、かごは上下に移動するのですが、この電磁ブレーキの開閉をつかさどるブレーキコイルの巻線がショートしてしまい、ブレーキ性能が低下した結果、かごを保持する力が失われて事故につながったと見られています。

今年10月末に「アパホテル金沢駅前」で事故を起こしたエレベーターのブレーキや制御盤、巻き上げ機は「シティハイツ竹芝」のエレベーターと同型だったことが明らかになっています。ということは、今回も似たような原因で事故が起こったのではないかと、素人ながらに想像してしまいます。改めて、なぜ、シンドラーの悲劇は繰り返されるのか?―― 実に悔やまれてなりません。

09年9月以降に着工したエレベーターには、「戸開走行保護装置」の設置が義務化 

そこで、6年前の「シティハイツ竹芝」の圧死事故をきっかけに、エレベーターの安全基準が見直されました。改正点は2点です。(1)定期検査報告制度の見直しと、(2)戸開走行保護装置の設置の義務化です(下表参照)。

エレベーターに関する法改正の改正内容

 

ただ、残念なことに「アパホテル金沢駅前」のエレベーターは法改正前に着工されていたため、「戸開走行保護装置」の設置義務はありませんでした。既存の建物や設備に対しては新たな改正規定を直ちに適用しないという建築ルール(既存不適格不遡及の原則)が障害となり、せっかくの法改正が十分な効果を発揮できないでいます。

ハード面では「戸開走行保護装置」の新設  ソフト面では危機管理体制の構築 

以上を踏まえ、マンション居住者が被害に遭わないためにはどうすればいいのか、最後に要点をまとめると次のようになります。 

  • 高経年マンションではエレベーターの全面リニューアルを検討する
  • 捻出できる予算が限られる場合は「戸開走行保護装置」のみを新設(後付け)する
  • メンテナンスを受託する保守点検業者の選定には細心の注意を払う
  • 事故が起きてしまった場合の「報告」「連絡」「相談」体制の確立
  • 保守点検業者との委託契約書や定期検査の報告書など、関連書類はきちんと保存しておく
  • 管理組合が先導してエレベーターの安全利用に関する啓蒙活動を実施する

ドアが開いたままの状態でエレベーターのかごが上下する「戸開走行」を防ぐには、「戸開走行保護装置」の新設が効果的です。もし、高経年マンションで地震発生時の閉じ込め防止機能が備わっていないなど、すでに機能面での不安をエレベーターが抱えている場合は、思い切って全面リニューアルを敢行するのが不安解消の近道です。当然、それなりの費用がかかりますので、長期修繕計画に盛り込み費用面の準備と同時並行してリニューアルの計画を立ててください。

それが無理なら「戸開走行保護装置」のみを後付けするようにしましょう。ただ、後付けするにも数百万円の費用がかかります。

それと、エレベーター事故を“人災”にしないためには、安心してメンテナンスを任せられる保守点検業者を選ぶことが重要です。ほとんどのマンションでエレベーターのメーカーと同系列の保守点検業者がメンテ業務を行なっています。常に緊張感を持って業務に従事してもらうためにも、随意契約は避けなければなりません。安かろう悪かろうの業者を選ばないよう、競争原理を活用して「高品質」「低コスト」の優良業者を見つける工夫が必要です。

そして最後、エレベーターに不具合が発生したことを覚知した場合は速やかに使用中止するとともに、保守点検業者に連絡して適切な措置を講じてもらう必要があります。最悪、人身事故につながってしまった場合は応急手当を施すとともに、消防や警察に通報する必要もあります。そのため、いざという時に慌てず冷静・確実に対処できるよう、指示系統・連絡体制の構築が欠かせません。常日頃からのエレベーターの安全利用に関する啓蒙活動を通じて、事故の撲滅に資するよう管理組合としての責務を果たさなければなりません。

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