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今ではおよそ4人に1人が65歳以上の高齢者となった長寿大国・日本

今年も「敬老の日」がやって来ました。2002年までは毎年9月15日が「敬老の日」でしたが、03年からは9月の第3月曜日へと変更され、今年(2012年)は9月17日が該当日となります。

老人を敬愛し、長寿を祝う国民の祝日として、長寿大国・日本にとっては、とても大事な日なのですが、今年、「社会保障と税の一体改革法案」が成立し、消費税率の引き上げが確定したという意味では、2012年の「敬老の日」を迎えるに当たり、わが国が置かれている窮状を今一度、思い返す必要があります。

日本は、1965年には1人のお年寄りを約9人で支える「胴上げ型」の社会でした。それが、今(2012年)や支え手が3人弱に減少する「騎馬戦型」の社会になりました。今後も支え手の減少は続き、2050年には1人が1人を支える「肩車型」の社会になることが見込まれています。

そのため、現役世代が高齢者世代を支えるという創設当初の社会保障制度は機能不全に陥ってしまい、世代間の格差を生じています。そこで、給付と負担のバランスを均衡させ、安定かつ充実した社会保障制度を取り戻すべく、野田政権によって消費税増税が断行されました。

総人口に占める65歳以上の割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」と呼ばれるのですが、この「高齢化社会」から「高齢社会」への移行に要した時間を諸外国と比較すると、フランスで115年、スウェーデンで85年、アメリカで72年。そして、ドイツでさえ40年かかっているのに対し、日本はわずか24年という他国に類を見ないスピードで移行しています。ここに問題の本質(根本原因)が隠されています。

実は、こうした急激な高齢化の進展は、マンション市場にも暗い影を落とし始めており、随所で誰にも看取られずに亡くなる老人の孤立死が散見されるようになりました。事実、私ガイドの身の回りでも、高齢の1人暮らし女性がマンションで孤独死する事例がありました。管理組合としても見過ごすわけにはいかないのです。どうすれば高齢者の死亡事例をなくせるか?―― 同じ悲劇を繰り返えさないためにも、実効性ある対応策を考える必要があります。

立川市の都営アパートで、90歳代の母と60歳代の娘がそろって死亡していた 

まず初めに、東京都立川市の高齢者対策をご紹介します。同市では今年3月7日、市内にある「都営羽衣町一丁目アパート」の一室で、この部屋に住む90歳代の母と60歳代の娘が2人そろって死亡するという痛ましい事例が発生しました。事態を重く見た立川市では、早急に再発防止のための方策を打ち出しています。まずは発見当日の生々しい様子からご覧ください。

<3月7日 午後2時ごろ>
民生委員から「安否確認が取れない」と、市内の地域包括支援センターに相談が寄せられる。

<午後2時30分ごろ>
市の職員2名で現地へ。ドアホン、ノックでの呼びかけ、ガスと水道メーターの数値を記録し、さらに、ポストの郵便物を確認。ドアポストから臭いがないか、電気の点灯状況も確認、向かい側のアパートからベランダ側の様子をチェック。隣人からも情報収集。ただ、根拠が十分でないため、室内への立ち入りは行わず。

<午後4時ごろ>
帰庁後、さらに情報収集。最終受診した医療機関への照会、東京都水道局への照会。集めた情報を整理・分析した結果、改めて現地へ訪問する方針を決定。

<午後4時40分ごろ>
立川市から東京都住宅供給公社に経過を説明し、警察・消防への対応依頼を判断するため現地同行を依頼したが、公社は「時期尚早であり、鍵を壊しての安否確認には親族などからの依頼がないと対応できず、独自の判断で警察を呼ぶことはしない」との回答が返って来たため、市は単独で現地確認に行くことを公社に伝達する。

<午後5時15分ごろ>
立川市の職員2名で再び現地確認。郵便ポストに2通の郵便物、ドアには代金引換えの宅配便の不在票が挟まっていたことから、室内にいる可能性が高いと判断。

<午後5時30分ごろ>
収集した情報と現地の様子などから、立ち入りによる安否確認の必要があると判断し、立川市の職員が110番通報。午後5時50分ごろ、警察官が到着。

<午後6時ごろ>
さらに、立川市の職員が119番通報。安否確認のための救急要請を行なう。

<午後6時10分ごろ>
消防・救急隊到着。消防隊が隣家のベランダから当該世帯のベランダに移動し、施錠されていなかった窓から室内へ侵入。遺体を発見し、2名の死亡が確認された。

                        ☆  ☆  ☆

今回のケースは、介護者が何らかの理由で介護ができなくなり、要介護者が自ら助けを求められず、結果として2人とも亡くなったと思われる事例です。立川市では原因究明・再発防止に努めており、地域の見守りシステムの再構築によって安否確認対応から日々の高齢者の見守り、さらに孤立の防止につなげたいと考えています。高齢者の現状把握や安否確認シートの作成などは、管理組合にも応用可能です。

【高齢母娘の死亡事例を契機に、立川市が打ち出した再発防止策】
  • 地域の高齢者の現状の把握(介護サービスの利用状況なども含む)
  • 安否確認シ―トを作成し、確認した情報や判断の根拠を明確化するとともに記録していく。
  • 市や地域包括支援センター、さらにはライフライン事業者(電気・ガス・水道)も含めた関係機関との情報共有ならびに連携強化
 ⇒ 総合的な地域の見守りシステムを再構築することで、高齢者の孤立死を防ぐ。


次ページでは、安否確認時のマンション内への「入室基準」をご案内します。