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繰り返される「シンドラーの悲劇」--エレベーター事故を防ぐには、どうすればいいのか? (イメージ写真)

かつて日本が誇っていた「安全神話」はどこへ行ってしまったのか?―― 近年、こうした疑問を抱かざるを得ない事故が目に付きます。

そう思わせる最たる例が福島第一原発の放射能漏れ事故です。未曾有の大震災とともに、原子力発電の安全神話はもろくも崩れ去りました。メルトダウンが「想定外」で済まされないのは誰の目にも明らかです。安全ではなく利益を最優先した東京電力の罪は、消し去ろうとしても消し去れるものではありません。

そして、次なる安全神話の崩壊がエレベーターです。今年10月31日、石川県金沢市の「アパホテル金沢駅前」のエレベーターで、63歳の女性従業員が戸開走行によりかごと乗り場に挟まれ死亡するという事故が発生しました。さらに、そのわずか1カ月後の12月3日には、名古屋市で28歳のアルバイト女性がアルバイト先の業務用エレベーターに挟まれて死亡。兵庫県姫路市でも同日、64歳の男性が取引先の皮革工場で貨物運搬専用エレベーターに挟まれて死亡しました。

エレベーターでの痛ましい事故といえば、2006年6月に発生した「シティハイツ竹芝」(東京都港区)での男子高校生(16歳)の圧死事故が思い出されます。高校生が自宅12階で自転車とともにエレベーターから出ようとしたところ、ドアが開いたままの状態でエレベーターが上昇し、エレベーター出入口の天井部分とエレベーターの床部分の間に挟まれて亡くなりました。

不幸にして、前述した「アパホテル金沢駅前」の事故も6年前の「シティハイツ竹芝」の事故も、どちらも事故を起こしたのはシンドラーエレベータ製のエレベーターでした。まさに“シンドラーの悲劇”とも言えるエレベーター死亡事故が繰り返されてしまいました。

マンション生活において、エレベーターは日常生活の「足」です。それだけに、誰もが自分のマンションは大丈夫か不安に思っていることでしょう。マンション内での死亡事故はマンションの資産価値にも悪影響を及ぼします。決して、繰り返されてはならないのです。そこで、マンション居住者が被害に遭わないためにはどうすればいいのか、事故を未然に防止するための対策を考えてみることにします。

1年に1回の定期検査、おおむね1カ月に1回の点検が義務付けられている 

まずは、どういうルールに基づいてエレベーターは安全管理されているのか、現行体制について見てみることにしましょう。

エレベーターは建築設備の1つであり、建築基準法によって最低限確保すべき技術的基準が定められています。エレベーター設置時には建築確認によって安全性(法適合)がチェックされ、また、設置後は「建築物の所有者、管理者または占有者は、その建築物の敷地、構造および建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と維持保全について規定されています。

さらに、建築基準法ではエレベーターの定期検査についても規定しており、「定期に、一級建築士もしくは二級建築士または国土交通大臣が定める資格を有する者に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない」としています。こうして、エレベーターの安全管理が図られています。

しかし、これだけでは定期検査の「定期」がどの程度の周期を意味しているのか分かりません。そこで、一般財団法人「日本建築設備・昇降機センター」策定による「昇降機の維持および運行の管理に関する指針」によって、以下のように具体化・明確化されています。

【昇降機の維持および運行の管理に関する指針】

(定期検査および報告)
昇降機の所有者または管理者は1年に1回以上、定期に国土交通大臣の定める資格を有する者(昇降機検査資格者)に昇降機の検査を行なわせ、その結果を昇降機定期検査報告書に作成し、昇降機に関する地域法人などを経由して特定行政庁に報告するものとする。

(定期検査・整備など)
昇降機の所有者または管理者は、昇降機の維持および運行の安全を確保するため、使用頻度などに応じて専門技術者に、おおむね1カ月ごとに点検その他必要な整備または補修を行なわせるものとする。


この指針に基づき、分譲マンションであれば管理組合から委託を受けたエレベーター保守点検業者が定期にメンテナンスを実施することになります。建築基準法はエレベーターの運行管理までは網羅していません。当該指針によって安全確保の重層化が図られています。

次ページでは、なぜ、死亡事故は繰り返されるのか?―― 核心部分に話を進めます。