イメージ写真

今や主要な居住形態として定着した分譲マンション。しかし、利用形態の複雑さが多くの問題を引き起こす。

日本に分譲マンションが誕生して、はや半世紀。今では全国のマンションストック数は約579万戸に達し、およそ8.5世帯に1世帯が暮らすまでに分譲マンションは身近な居住形態として定着しています(2011年末現在)。ところが、その分譲マンションも50余年を経て様々な問題を抱えるようになり、良好なマンション生活を阻害しかねないトラブルが顕現化しています。

分譲マンションは1つの建物が多くの人々によって区分所有されるため、どうしても全体としての合意形成が難しく、居住者の多様な価値観を意思統一するのは容易でありません。加えて、「専有部分」「共用部分」「専用使用権」「敷地利用権」といった権利関係が混在するため利用形態が複雑になり、いくつものトラブルを誘発しています。

国土交通省の「平成20年度マンション総合調査」によると、「居住者間の行為・マナー」と「建物の不具合」について、それぞれ以下のようなトラブルが発生しています。マンション3大トラブルと言われる「駐車場」「ペット飼育」「上下階の騒音」に次いで、「水漏れ」「雨漏り」といった漏水関係の不具合も目立ちます。

◇マンション生活でのトラブル <居住者間の行為・マナー>(重複回答)
 ・生活音………………………………………37.1%
 ・ペット飼育  …………………………………34.8%
 ・違法駐車……………………………………31.2%
 ・違法駐輪……………………………………21.5%
 ・共用廊下などへの私物の放置 ……………18.7%
 ・バルコニーの使用方法 ……………………15.2%
 ・専有部分のリフォーム………………………5.4%

◇マンション生活でのトラブル <建物の不具合>(重複回答)
 ・水漏れ………………………………………22.0%
 ・雨漏り………………………………………14.1%
 ・アフターサービスに関するもの ……………6.0%
 ・瑕疵担保責任に関するもの ………………3.9%
 ・外壁の落下…………………………………3.0%

水漏れトラブルを巡り、訴訟へと発展  改めて痛感させられる知識武装の必要性 

ここで、漏水事故に関する事例を1つ紹介しましょう。2011年3月に発生した東日本大震災を受けて、次のような水漏れトラブルが実際に起こりました。東京・杉並区内のマンション(築29年)で6階に住む男性宅の電気温水器が震度5強の揺れで配管毀損を起こし、下階(5階)の部屋を水浸しにしてしまいました。

そこで、6階の住人は加入していた保険で対応しようとしましたが、保険会社が地震の免責条項を理由に保険金の支払いを拒否したため、男性は提訴を決意。一審の東京地裁では敗訴しましたが、二審の東京高裁で一審判決が取り消され、男性の請求した約150万円の損害賠償が認められました。逆転勝訴というわけです。

実は、提訴した原告(マンション住民)は職業が弁護士でした。法律のプロだったのです。おそらく、一般の会社員の人が当事者だったら、保険会社の言い分を受けて「仕方ない」と泣き寝入りしていたでしょう。漏水トラブルの復旧費用を全額、自分で負担していたに違いありません。

マンション内での水漏れトラブルは得てして漏水箇所の特定が難しく、冒頭で触れたように権利関係が複雑なため、仮に漏水箇所が突き止められても、今度は不具合箇所を誰が修理・費用負担するかで利害調整をしなければなりません。上述のように、せっかく保険に加入していても、原因によっては保険金支払いを拒まれる可能性があります。分譲マンションでの漏水トラブルは、実に“厄介”なのです。

それだけに、水漏れ事故の被害を最小化するには、各人がトラブルに対する十分な知識を蓄えておくことが欠かせません。攻撃は最大の防御というように、知識武装しておく必要があります。特に法律の知識は絶対に欠かせません。そこで、本コラムでは法律知識の習得に励んでいただけるよう、基本となる法令をご紹介します。

 次ページで、3つのモデルケースをもとに詳しく解説します。