家族が感情的になると心の病は悪化、再発しやすくなる
家族が心を病んでしまったときに抱える不安や動揺、怒りなどの気持ち。大切な人にどう接するべきなのでしょうか?
しかし、思ったことをそのまま心の病を持つ家族にぶつけると、その感情を向けられた側はとてもつらくなり、追い詰められてしまいます。1960年代、イギリスのブラウンらが統合失調症の再発と家族の感情表出との関係を研究したところ、感情表出の高い家族と接する人ほど統合失調症の再発率が高くなっていることが分かりました。その感情表出には、次の3つのタイプがあるとされています。
1. 相手を批判するタイプ
病状や療養中の生活態度等について、批判的な言葉や態度を露わにすること(例:「いつまでも寝ているだけでいいの!?」「なまけ病なんじゃない?」など、批判的な気持ちをぶつける)
2. 相手に敵意を向けるタイプ
相手に対して敵意の感情を露わにすること(例:「もう世話なんてしたくない!」「一緒にいたくない!」などのように、相手に怒りや憎しみの気持ちをぶつける)
3. 情緒的に巻き込まれるタイプ
相手の状態に情緒的に巻き込まれること(例:「本人がいちばん苦しいのだから、家族は楽しんではいけない」などのように、相手の状態に自分の心が左右されてしまう)
心から心配する家族だからこそ、このような感情が生じるのでしょう。しかし、心の病を抱えた人にとっては、このような家族の思いが非常に強いプレッシャーとなり、回復の妨げになってしまうのです。
感情を抑圧しすぎると、いずれは我慢しきれなくなる
家庭という密室でのかかわりが、心の病を持つ家族を追い詰めてしまうことは多い
まず、感情的になりやすいのは、家庭という密室の中だけで、家族の問題に向き合っていることが大きな要因になっていると考えられます。つまり、感情を外に向けて発散していないため、家庭の中で感情をぶつけてしまうものと思われます。
感情を家庭の外で表出できないことには、「話を聞いてほしいけど、他人に家庭の事情を知られたくない」といった思いがあるのかもしれません。また「私が支えなければ」「弱音を吐いてはいけない」といった思いから、感情を抑えているのかもしれません。そのままでいるといずれは我慢しきれず、感情を家族にぶつけてしまうかもしれません。
「家族会」で気持ちを共有し、学び合うことができる
家族として同じ悩みを持つ人同士だからこそ、思いを分かち合い、共感することができる
家族会の最大のメリットは、似た悩みを持つ家族同士が忌憚なく語りあい、共感できることにあります。治療や回復に必要な情報を知り、適切なかかわり方を学びあうことで、自分の接し方を振り返ることもできます。
家族会は、最初は「参加者の意見を聞くだけ」のつもりで参加している方が多いです。やがては自分の体験や思いを話すことで、誰かの役に立つこともあるかもしれません。
「地域活動支援センター」など地域の福祉サービスを利用する
心の病を持つ当事者と家族を楽にしてくれる場は、地域の中にある
たとえば、市町村にある「地域活動支援センター」では、心の病を持つ当事者が、交流や文化活動、運動を行いながら、社会とつながり、自立に向けて活動しています。その間、家族は家族会に参加したり、自分の時間を持つこともできるでしょう。
その他、地域で利用できる障害者自立支援のサービスでは、相談や日中活動、居住支援、就労支援、訪問サービスなども充実しています。利用方法は、医療機関のソーシャルワーカーや地域の障害福祉課等の窓口で尋ねるとよいでしょう。
家族会や地域の社会資源とつながることで、家族への感情は楽になります。自分自身が楽になれば、家族への態度も穏やかになり、双方にとって良い効果が得られるでしょう。