桁違いの富裕層の心を釘づけにした靴!
1997年の返還以降はいわゆる「大陸化」が徐々に進みながらも、依然中国と欧米との経済的・文化的接点であり続けているメトロポリス・香港。街全体に澱む独特の湿気は、東京なんて静かなものよと鼻で笑える疾走感的な魔性を帯びていて、これに一度嵌ると抜け出すのは困難を極めるようです。「またあそこで働きたい!」と会社の自己申告の度に再赴任のリクエストを出しているのが、個人的な知りあいにも複数います。以前はジュエリー業界に身を置き長く香港に駐在していた奥山氏も、同様にそのアップテンポなリズムが忘れられず、靴学校を卒業した2008年、ビジネスの地に何の疑問もなくこの都市を選びました。香港はブランド品の充実もさることながら、実はオーダーメード天国であることをご存じの読者も多いでしょう。著名なホテルのアーケードには必ずと言って良いほど、紳士靴のみならずスーツやシャツのオーダーサロンがあるのですが、その多くがどちらかと言えば観光客相手のスピード重視の体制。それに対しMASARU OKUYAMAの靴は正反対の立ち位置、すなわち日本や欧米のビスポークメゾンと同様に製作に十分な時間を掛け、美しい一足を創り上げる姿勢を貫き通しています。その独自性もあってか、立ち上げからわずか4年にも関わらず、主要顧客には現地の超・富裕層や欧米企業の駐在員のトップクラスの名前がズラッと並びます。
彼らにとってはわざわざ欧米に行かなくても、あるいは戻らなくても同等の靴が入手できることが大きな魅力。先日も香港では知らぬものがいない、この都市のサクセスストーリーには欠かせない大富豪一族から注文を頂けたとのことです。となると、さぞやクロコダイルのようなエキゾチックレザーのアッパーでのオーダーも多いかと思いきや、圧倒的に主流なのは意外や意外、黒のボックスカーフの指定だそう。この辺りは「ビジネスでの場面に使える靴」を求める堅実志向の顧客層がしっかり付いている、何よりもの証拠でしょう。ちなみに香港は関税が掛からないフリーポートなので、アッパーの革や底材(イギリスのJ & FJ Baker製)は欧州各国から日本に比べ容易に入手できるものの、その他の部材は全て日本から取り寄せています。
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