「国」ではなく、「國」の文字を使う。これが「國酒」。

酔っぱらうと読めなくなりそうな気もするが、ともあれ日本酒・焼酎が「國酒」となった。この「國酒」、我々酒ファンにとってどういう意味があるのだろうか。


それは今年の初夏のことだった

今年、平成24年5月、古川元久国家戦略担当大臣(当時)が、日本を代表する酒として日本酒・焼酎を「國酒」とした。これをもとにオールジャパン体制(官民が一緒に事を運ぶといった意味ですね)の「國酒プロジェクト」が始動した。さて、この「國酒」や「國酒プロジェクト」とは、いったいなんなのか。

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水と米と米麹、まさに日本の魂が宿るのが日本酒だ。

「國酒」と「國酒プロジェクト」の話をする前に説明をしておこう。実はこの「國酒(コクシュ)」という呼び名、このたび生み出された新しい呼び名ではない。発端は30年前、大平内閣のとき、日中国交回復の晩餐会にてホスト国である中国が自国の酒「白酒(パイチュウ)」でカンペーし日本を歓待した。これを受けた当時の大平首相は、日本には伝統の酒である日本酒や焼酎があるのに、我が国での外交晩餐会はフランス料理にワインなどで乾杯をしている。これはいけないと思い立ち、日本酒・焼酎を「國酒」と命名し、乾杯の際に使用することを提案したのだ。
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ずらり並んだ國酒の書。歴代の総理の個性がわかる


その後、歴代総理大臣はみな「國酒」の色紙を作成しており、一生懸命PRしているように見える。しかし色紙には書くが、実際、乾杯に使われることはほとんどなかった。

ちなみに一連の総理の書は、蔵元などで見ることができる。酔っぱらって書いちゃった?みたいなのがあったりして、ね。




日本食人気に便乗しますが、なにか

公的な食事会で日本酒・焼酎が乾杯酒に使われることはないうえに、「國」という文字が難しいし右翼的なイメージがあるせいか、いまいち浸透せず。もとより日本酒・焼酎離れが加速していたこともあり、ここ30年来、みんながこの呼び名をどこかに置き忘れてしまったのだ。

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お湯割りで飲む焼酎は、つまみと合う食中酒でもある。

日本国のPR部長、営業本部長ともいえる国家戦略担当大臣が、この忘れられた呼び名「國酒」を思い出し、もっと海外に売ってもいいんじゃない? むしろ今、チャンスじゃない? と考えたのが今年なのである。

きっかけは、海外で日本食とともに日本酒がじわじわ飲まれ始めている現状をご覧になってであろう。大臣を取り囲む官僚の方々にお酒好きがいたのかもしれない。

「國酒」という呼び名がいいのか悪いのかは議論の余地ありだが、日本産の伝統酒を外国人に知ってもらうというのはとにかくうれしい。一介の酒ファンであり、酒業界に身を置く者にとっては「待ってました! 手伝いますぜ、兄貴」といった気分にはなるのである。