自宅を売却すると、機械式駐車場の所有権は新たな区分所有者に引き継がれる
イメージ写真(実際のマンションの写真ではありません)
分譲された機械式駐車場は全部で24台分あり、販売価格は1台あたり120万円~220万円でした。そして、その他にも下表のような管理費や一時金の負担があり、契約者は分譲マンション本体にかかる管理費や積立金とは別に、「分譲駐車場」名目での支出が必要となります。
こうした分譲駐車場については誰もが損得勘定を頭に思い浮かべると思いますが、同社が同じ西宮市内で分譲した別のマンションは従来型の賃貸方式による駐車場形態を採用しており、その使用料は月額9000円~1万4500円に設定されています。よって、この近辺でのマンション敷地内の機械式駐車場使用料(相場)が仮に月額1万2000円とすると、分譲駐車場の販売価格220万円(最大額)の元を取るには15年かかる計算になります。投資資金を回収するには、何年、そのマンションに住むかという未来予想図を描く必要があります。
半面、所有権という強い権利が設定されることで、権利上はマンション外の第三者に駐車場を賃貸したり譲渡することが可能になります。「台数が全戸分ないので、あくまでマンション内の希望者(居住者間)での取引を想定しています」と当該マンションの分譲業者は説明していましたが、たとえば分譲駐車場を所有する区分所有者が自宅を売却した場合、この駐車場の所有権は新たな区分所有者に引き継がれます。現住する区分所有者の思い通りにはなりません。こうした利用格差が積み重なり、利害対立を拡大させます。
疑問視される、マンション分譲業者は「二重の利益」を得ているのではないか?
敷地内駐車場の権利(所有権や専用使用権)を売買の対象にすることで、しばしば指摘されるのが「マンション分譲業者が“二重の利益”を得ているのではないか」という問題です。分譲マンションは「専有部分」と「共用部分」から構成されており、その共用部分の一部として機械式駐車場は存在しています。当然、分譲マンションの販売価格(対価)には駐車場も含まれています。にもかかわらず、1台あたり120万円~220万円の利益が別途、分譲業者にもたらされます。駐車場を含むマンション敷地は共用部分として区分所有者全員の共有とされているわけですから、分譲業者が独立の取引対象にしたり、永久使用できるような物権的権利を設定するのは不可能なはずです。しかし、実際に敷地内駐車場は分譲されています。これを“二重売買”と言わずして何と言うのか ―― 理解に苦しむのは、私ガイドだけではないはずです。
マンション分譲業者は売ったら終わり。その後のトラブルは、すべて管理組合が被ることになります。敷地内駐車場の分譲が好ましくないことは火を見るより明らかです。
こうした分譲駐車場を敷地内に有するマンション(管理組合)は、駐車場管理費や積立金の使途を明確にし、また、分譲駐車場を賃貸・譲渡する場合のガイドラインを作成するなど、利害調整のためのルール策定が欠かせません。管理組合が駐車場所有権を消滅させることは困難とされています。マンション管理組合が先頭に立って、トラブル予防に努めることが最善策となります。