待遇に関する事項などの説明(派遣元への規制)
派遣労働者への説明義務・中途解除の際の派遣先の措置など、トラブル回避策を講じてください
派遣元企業は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対して、書面の交付などで、下記の事項の説明をしなければならなくなりました。
・賃金の見込み額や待遇に関すること
・派遣元企業の事業運営に関すること
・労働者派遣制度の概要
派遣先の都合で派遣契約を解除するときに講ずべき措置
(派遣先への規制)
派遣期間中でも、何らかの都合で労働者派遣契約が中途解除される可能性もあります。派遣先企業の都合により派遣契約を解除する場合には、次の措置を講ずることが義務づけされました。派遣契約時にこれらの措置について明記しなければなりません。
・派遣労働者の新たな就業機会の確保
・休業手当などの支払いに要する費用の負担 など
の措置をとることが、派遣先の義務となります。
(実務上のポイント)
派遣契約書(派遣元と派遣先の両者間の契約)で上記の措置内容を定めること
派遣労働者を受け入れている企業(派遣先)は要チェックの内容です。派遣契約が解除されても、派遣元と派遣労働者の雇用契約は、その契約期間満了までは残っているため派遣先が講ずる措置があるのです。派遣元は、解除されたので次の派遣先が決まるまで自宅待機などをさせることになります。それには休業手当支払い義務が生じます。その費用負担などの措置が、派遣先の義務となったのです。
有期雇用派遣労働者の無期雇用への転換推進措置
(派遣元への規制)
派遣元企業は、有期雇用の派遣労働者(雇用期間が通算1年以上)の希望に応じ、以下のいずれかの措置をとるよう努めなければならなくなりました(努力義務)。
・派遣労働者ではなく、無期雇用労働者として雇用する機会の提供
・紹介予定派遣の対象とし、派遣先での直接雇用を推進
・無期雇用労働者への転換を推進するための教育訓練などを実施
(実務上のポイント)
有期雇用の派遣労働者は、有期であるため雇用調整がされやすい(期間満了で雇い止め)実態があります。そのため、派遣元企業に対して雇用の安定の措置を取るよう努力義務が課せられたのです。上記の措置ですが、企業側が一方的に措置内容を決めることは避けましょう。「労働者の希望に応じた」措置を取るよう努力することで対応することです。
派遣労働者が無期雇用労働者か否かを派遣先への通知事項に追加(派遣元への規制)
労働者派遣法では、派遣元企業は派遣先企業へ一定の事項(氏名など)を通知する義務があります。今般の法改正で、派遣労働者が、有期雇用労働者か否かを通知する義務が追加されました。
(実務上のポイント)
上記により有期・無期が分かります。無期労働契約の場合は、派遣先の労働契約の申し込み義務がなくなります。一定の条件を満たした労働者に対して派遣先は、雇用契約の申込みをしなければならない義務がありますが、無期雇用の派遣労働者である場合は、申し込み義務はなくなります。
均衡待遇の確保(派遣元・派遣先への規制)
■派遣元企業の義務
派遣元企業は、派遣先企業の同種の業務に従事する労働者と労働条件の均衡に配慮しなければならなくなりました。次の1と2です。
1.賃金決定時の配慮
・派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準
・派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験など
2.教育訓練や福利厚生などの均衡に向けた配慮
・派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮
■派遣先企業の義務
派遣元企業に対し、必要な情報を提供するなどの協力が求められます。派遣元企業とすれば、派遣先企業の賃金などの情報がなければ均衡配慮は困難でしょう。同種の業務従事者の情報提供に努めましょう。
労働契約申込みみなし制度
(平成27年10月1日施行)(派遣先への規制)
派遣先企業が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先企業が派遣労働者に対して労働契約の申し込み(直接雇用の申し込み)をしたものとみなす制度です。平成27年10月1日からの施行となっています。
労働者派遣法に違反した場合、直接雇用の申込みをしなければならなくなるということです。派遣が許されているのはどういう場合なのか、今一度法令に立ち返ってみてください。労働者派遣は、本来は労働力の需給調整に役立つ制度です。派遣元・派遣先ともに趣旨を十分理解して派遣労働者に対応していくことでトラブルは避けられるのです。この制度の施行は数年後ですが、実務上大きな影響を及ぼす内容です。検証を急ぎましょう!
<関連資料>
労働者派遣法が改正されました(厚生労働省リーフレット)