損害保険/火災保険の基礎を学ぼう

火災保険の相続発生による名義変更、契約者が死亡した場合の手続き

火災保険は、所有者が死亡して相続が発生した場合に、被保険者・必要あれば契約者の名義変更(権利譲渡)の手続きが必要です。しかし意外とあっさり手続きできるケースと書類を整えるのに苦労するケースの火災保険契約があります。相続時の手続きで関係する火災保険の名義変更(権利譲渡)について解説しましょう。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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相続手続きが済んだら火災保険の名義変更が必要

火災保険は所有者が死亡して相続が発生したら契約者の名義変更を

所有者が死亡した場合の相続手続きと火災保険の名義変更

火災保険には色々な手続きがあり、相続発生の際の名義変更もそのひとつです。
物件の所有者が死亡すると相続が発生し、最終的にはその物件の所有者は相続人に変わりますから、名義変更の手続きが必要です。相続発生における火災保険の名義変更の手続きについて解説します。
   

火災保険にかかわる「契約者」「被保険者」「所有者」とは

最初に火災保険の契約にかかわる人について説明しておきます。
  • 契約者……保険契約の当事者で契約をして保険料を支払う人です。
  • 被保険者……火災保険の補償を受ける対象者になる人です。火災保険(建物)では、物件の所有者になり、契約時に指定しなければ契約者と同じ人になります。
補償を受ける人(被保険者)が所有者であるというのは、物件の所有と関係ない人が契約できたら、火災で全焼して保険金を貰った方がよくなってしまうからです。

契約者と被保険者が同一のこともあれば、そうでないこともあります。建物が親と子(もしくは夫と妻など)の共有名義などの場合、被保険者はその親と子などの複数になります。

生命保険のように人にかかる保険では、一部の例外を除いて原則として被保険者は一人ですが、火災保険ではこのように複数の人が被保険者になることがあります。火災保険の契約者はあくまで一人でこの場合は親でも子でも構いません。火災保険の契約や建物の所有者に関することは、これが前提です。
 

火災保険の通常の名義変更

どんな保険契約でも契約期間中に契約内容に変更が生じることがあります。火災保険も同様で、住所変更や銀行引落口座の変更、保険目的の追加、増築などに伴う増額や逆に減額など様々です。

相続というと大げさに考える人もいますが、名義変更もそうした手続きのひとつにすぎません。物件の所有者が変わり、被保険者の変更をすることを火災保険の手続き上は「権利譲渡」といいます。

名義変更(権利譲渡)は契約者死亡による相続のみで起こるわけではありません。贈与など別な事由でも発生し、決して珍しい変更内容ではありません。

但し、相続による火災保険の名義変更(権利譲渡)は、契約者等が死亡していて契約者本人が自分で書類を作成することができない点が大きく違います。
 

名義変更していないと、事故で火災保険は支払われないの?

相続の発生時に火災保険の名義変更手続きをしていないと保険金は支払われないかというと、必ずしもそんなことはありません。そもそも契約そのものに不備があるわけではないからです。

保険金は法定相続人には支払われます。ただし、スピーディな支払いになるかというとやはり手続きが必要になるので、早めに手続きを済ませておく方がいいでしょう。

その他、火災保険契約が銀行引落の月払いになっていて、口座振替不能をそのままにしておくと一定期間後に契約が不払い解除になります。口座振替不能の契約については保険会社もほったらかしにはしませんが、契約が解除されたら保険金が支払われることはありません。

遺産分割が済んで登記簿上の所有者が変わったら火災保険の被保険者(必要があれば契約者も)を変更する必要があるのです。
 

火災保険の契約者(被保険者)死亡での名義変更

所有者死亡で相続発生…火災保険はの名義変更の手続きは?

相続での火災保険の名義変更の手続きは?

相続時の火災保険の名義変更は、どのように手続きすればいいのでしょうか。一般的には「火災保険契約内容変更届出書」に必要事項の記入等で処理は済みます。この書類は火災保険のあらゆる契約内容を変更する際に使われます。

名義変更には比較的簡単にできるケースとそうでないケースがあります。これは簡単なケースの場合です。手続きが簡単かどうかは、火災保険契約が相続財産になるかどうかで変わってきます。

目安となる条件は、契約している火災保険契約がお金が貯まらない「掛捨型」であるか、お金が貯まるタイプの「積立型」などの火災保険かです。
 

相続時の積立型火災保険の名義変更手続き

積立型の火災保険の場合、積み立てられているお金があるため、これが相続財産にあたります。名義変更をした場合、契約が満期になれば満期返戻金が払い戻され、解約すれば解約返戻金が支払われるからです。

預貯金などのように相続財産として取り扱われるのでそれに応じた手続きが必要です。

相続発生に伴う積立型の火災保険の名義変更には原則、相続人の承諾が必要です。相続人の数などによって必要な書類は変わってきますが、保険証券や印鑑証明書・実印、戸籍謄本、返戻金を受け取る場合、その人の本人確認書類等が必要になります。

身内が死亡していますから慌ただしいでしょうが、特に積立型の火災保険であれば早めに保険会社に連絡・相談しておきましょう。いまは積立型の火災保険は主流ではありませんから、該当する人は少ないでしょうが覚えておいてください。
 

掛捨型の火災保険なら、相続発生時の名義変更手続きは簡単?

掛捨タイプの火災保険なら簡単な書面の手続きだけかというと、必ずしもそうとも言い切れないケースがあります。

具体的には超長期で火災保険料を一括払いしているケースです。2015年10月から火災保険は最長10年間までの契約に変わりましたが、それ以前は36年間契約することができました。たいていは住宅ローンの返済期間に合わせるかたちで、何かあっても火災保険でローンの残債を精算できるようにしていました。

長期の火災保険の契約の保険料を一括払いしているということは、亡くなった人が将来の分も保険料を先払いしています。つまり解約すれば解約返戻金が発生するのです。手続きや処理が1年契約の月払いでの掛捨ての火災保険とは変わることがありますので注意してください。

※相続発生に伴う火災保険の名義変更手続きについては各社異なることがあります。必ず契約先の損害保険会社に必要な書類や手続きを確認するようにしてください。

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