「高齢化」「単身化」という社会背景が、専有部サービスの需要を喚起する
今や、マンションの世帯主年齢は60歳以上が全体の約4割を占める。
同様に「単身化」も深刻で、誰にも看取られずに1人暮らしの高齢者が死亡するという孤立死が社会問題になっています。各自治体は対策に乗り出していますが、十分とはいえません。こうした時代の変化に呼応すべく、マンション管理会社も動き始めています。
今年9月から「ブリリア暮らしのホットライン」を開始した東京建物アメニティサポートも、導入の経緯を「共働き世帯・高齢者世帯・単身者世帯が増加したことなどに伴うお客様の価値観・ニーズの多様化に対応すべく、共用部分だけではなく専有部分へも生活支援サービスを拡大することとした」と説明しています。要は、共用部分のみをサービス範囲とした管理業務の提供では、マンション居住者のニーズを十分に満たせなくなっているのです。これまでは共用部分のみを対象としていればよかった「マンション管理」という概念そのものが、変化し始めている証左です。
他社との「差別化」を図るべく、専有部サービスを積極導入する管理会社
実は、見方を変えると専有部分へのサービス拡大は競争が激化するマンション管理業者の「差別化」のためのツール(手段)としても利用されています。2011年度末現在、日本には2391社のマンション管理会社(業者登録ベース)が存在しており、およそ8万1400ある管理組合(2010年度末現在)の管理業務を請け負っています。ところが、受託戸数ベースで見ると上位15社の管理会社(下表参照)が全体の46.1%を占めており、大手の寡占化が進行しています。
調査元のマンション管理新聞社によると受託管理戸数を減らしている管理会社もあり、その数は108社にのぼるそうです。なかでも受託管理戸数が1万戸未満の管理会社が、その4割近くを占めており、小規模な管理会社ほど窮地に立たされやすい傾向にあります。
このように新築マンションの市場規模が拡大しない中にあって、管理会社が受託戸数を拡大させるのは容易ではありません。他社との差別化を図り、自社の優位性をアピールするしか手立てはありません。そのツールとして専有部サービスは威力を発揮します。
今後、「専有部分」「共用部分」という“垣根”はなくなり、マンション内で発生した困り事すべてに対応できる機動力が管理会社には求められてきます。これからは「専有部分」も「共用部分」もないのです。マンション居住者の求めに応じ、あらゆるニーズに対応できる能力が管理会社には必要となります。その足がかりとして専有部サービスの普及・拡大は大きな意味を持ちます。「マンション管理業」=「住生活サービス業」との認識に立てば、もはや専有部分へのサービス拡大は必然の流れとなっています。分譲マンションにお住まいの皆さんには、専有部サービスを上手に活用してほしいと思っています。